優しすぎるヒロイン東雲さんに恋する榊くん。頼って欲しくて居残り雑用をしてみるも、その想いは本人には全く伝わっておらず…?
応援したくなるキャラクターの描き方が見事でした。カルガモのエピソードでは優しさとちょっと変わっている彼女らしい人柄を表現できていて、読者目線でも好きになってしまいました。また、そういった人柄を表現する表情の描写もお上手で、彼女の温かい人柄はもちろん、振り回されている榊くんの表情変化も面白く、終始楽しんで読むことができました。東雲さんを想う榊くんの心情も優しさがにじみ出ていて好感度が高く、くっついて欲しい!と思える2人を描けていたと思います。画面作り・見せ方もお上手でギャグテイストでゆるく行くときと、少女まんがとしてドキドキや感情を見せるときで上手く描き分けができていたと思います。今後の課題はスト―リーです。今回はページ数の制限もあり、2人の立場や背景が描けていないため、キャラやお互いに向ける感情の奥行がなく、話のドラマ性は薄いです。2人の感情が盛り上がるための障害や山場づくりなども意識して長いページのお話にも挑戦してみてください。
東雲ちゃんの過去のエピソードや榊君のモノローグの言い回しにそれぞれの個性が出ていてとても良かったです!盛り上がるシーンが分かりやすくて全体的に読みやすかったですね。折角絵がお上手で台詞回しも良いので、榊君のカッコ良いシーンを増やしたり、2人の距離感が近い絵を描いて読者をドキドキさせて欲しいかも!
ちひろはクラスメイトの片岡がコンクリートブロックを食べている姿を目撃してしまう。それがきっかけで2人は話すようになり…?
カタツムリ男子という、新鮮かつインパクトのあるキャラが光る作品でした。もともとのアイデアが素敵ですし、そのキャラを魅せるためのシーン演出もお見事でした。一番初めのページの引きが抜群で、一気に物語に入り込んでしまいました。コンクリートを食べている男子を見て、「この人は何者? 気になる!」と、まさにちひろと同じ気持ちで感情移入しながらページをめくることが出来ました。そして、途中のキスシーンも片岡くんだからこそ出来るキスになっていたのがとっても良かったです。キスシーンにはおよそ似つかわしくない「ザリ」という効果音で興味を引いたあとに、カタツムリの説明を入れることで、突飛なキャラ設定の説得力が増したように思います。今後の課題はストーリーのまとめ方です。序盤はキャラの魅力で引っ張っていって、後半ではヒロインの悩みにスポットライトが当たっているためか、せっかく光ったカタツムリの設定部分の存在感が段々と薄くなってしまったのが勿体なかった印象です。
設定に特殊性があるものは文字が多くなりがちですが、台詞で説明しすぎず、丁寧に適切なエピソードを積み上げて状況や絵で表現されていてとても良かったです。間やテンポもご自身の作風に合う空気感を作り上げていて作品としてのまとまりがあると思いました。より長いページ数になるとどうなるのか読んでみたいです。
主人公・神崎は、高嶺の花扱いされて友達がいない日々。ある時、悪い噂が絶えない榎本くんとゴミ捨て作業をすることになって?
太目のアイライン、ぽってりした唇、立体感のある顔の描き方など、現代風の絵柄が可愛らしいです。神崎は華やかなキャラデザで、高嶺の花扱いされることにも納得。リアクション絵もコミカルで可愛らしく、飽きずにコマを追えました。また、メインキャラクターも魅力的でした。榎本くんの悪い噂を鵜呑みにしない神崎や、弟のために金髪にする榎本くんなど、応援したくなる優しいキャラでした。一方、ストーリーづくりは要研究。主人公の友達作りを主軸に展開するかと思いきや、ラスト数ページで互いの印象の違いに盛り上がるため、何を楽しむ話だったのか混乱してしまいました。印象のすれ違いを楽しむのであれば、前半、主人公に榎本くんの印象を何かしら抱かせた方が◎。もしくは、友達づくり」を主題に置くのであれば、2人で下校したり、お菓子を食べたりすることに、「友達っぽい!」と主人公が喜ぶ描写を入れるともっと効果的だったはず。何を楽しむお話なのか、主題に沿った展開を意識しよう。
終盤のコマの流れやモノローグの入れ方など見せ方が上手だなと思いました。キャラクターに目力を宿せるのは作家の強みですし素敵なのでこれからも目を大事に描いてほしいです。個人的にはラストの噂になかったじゃん!の後にあるだろうぎこちない2人の色んなドキドキするやりとりも見てみたいので前半の構成を推敲したいと思いました。
魔族が人間により追放された世界。半魔族のヘレナは人間に馴染めずに暮らしていた。ヘレナは薬を配っていたが、受け取られず…?
総合力が非常に高い作品でした。その世界観にいかに引き込めるかが重要なファンタジーものですが、文字での説明は必要最小限でまとめているのに加えて、背景をしっかり描き込んでいて、世界観を反映した小物などが出てくることで、視覚的にもすんなりと入り込むことができました。ストーリー構成もお見事です。今回のようなキャラ配置だと、どうしても監視役・ルークとの恋物語を始めたくなると思うのですが、タイトルの通りヘレナの「人間と仲良くなりたい」という願いにフォーカスを当てて、最後までテーマがブレなかったことで、まとまりのあるお話になっていました。山場のシーンでは、ルークの一言でヘレナが人間たちからの信頼を得る……という展開ではなく、彼女が自ら動いたことで解決したという点も、とても良かったです。研究していただきたいのは絵柄です。顔がや
や下膨れっぽく見えてしまうのが勿体ないです。目の位置が高めなので、輪郭の下半分にパーツを集める意識で描いてみてください。
伝えたい事が明確で分かりやすい所がとても良いと思います。街並みや小物も丁寧に描かれていて、ファンタジーな世界観を違和感無く読めました。ただキャラデザにあまり華が無いのと、モブと主人公の顔がほぼ同じな所が気になりました。
腕利きの殺し屋である主人公は、ターゲットの蛇ノ目拓巳の殺しで人生初の失敗。しかも拓巳はどうやら主人公に惚れてしまって…?
設定や扉など、物語の随所随所で読者の注意をひこう、読者を楽しませようという意識が感じられました。ヒーローキャラにちゃんとギャップを作ろうとしていたのも良かったです。また絵柄も可愛らしく、コマ割りも読みやすいので世界観にも入りやすかったです。一方で展開を言葉で説明している箇所が多かったので場面や台詞で情報を伝えられるようになると◎。キャラクターの性格や心情なども説明になってしまっていたのでキャラクターの心情や人柄が分かるようなモノローグを意識してみましょう。画面に関して、アップやロング、ミドルアングルをバランスよく使用し飽きない画面作りが出来ています。しかし全体的に人物が棒立ちっぽく見えてしまうので人体の構造を勉強して動きのある体が描けるようになると表現の幅もより広がると思います。背景も少し立体感がない印象だったので意識してみて下さい。せっかく絵柄が可愛いので、見せ場のコマなどは他部分に比べ気合を入れて描いてもらえるとより良いです。
ベタ・トーンでの画面の濃度が全体通して見やすいです。線も綺麗で背景や小物もしっかり描写されていて、絵柄もかわいいです。ストーリーもちゃんと起承転結があって楽しく読めました。読みやすさの一方で、カメラワークやポーズに動きが足りないのが勿体無いです。コマ割りも見せゴマを意識して思い切りのいい画面作りをすると良いかと!
大人しめで実家の犬に激似なクラスメイト・潤くんに惹かれた那月。しかし、付き合ってからの彼は犬というより嫉妬に狂った狂犬で!?
「嫉妬深いヤンデレ」というだけでなく、それをさらに「狂犬」と称して、噛みつき癖や反省している時の犬の真似などを盛り込んでいたのが良かったです。そのキャラならではの特徴を、見事に具体的なエピソードに落とし込んでいました。見せ場でも潤くんの魅力が活きるような演出ができています。一方で、課題はストーリー構成。男の子のキャラは目立っているものの、主人公である女の子のキャラが弱いのでストーリー的に盛り上がりに欠ける印象です。最初と最後で主人公の感情、もしくは現状に何らかの変化が生まれていると読みごたえに繋がります。また、男の子がどうしてここまで主人公に執着するかの理由付けも描けると、納得感が増すでしょう。絵柄がとても可愛く、見せ場のコマ割りは大胆で良かったですが、その他のコマ割りが顔のアップ多めに感じます。背景をしっかりと描き込んだり、余白のためのコマを使ってみると、さらに画面が華やかになるはずです。必要に応じて変形ゴマも活用してみましょう。
潤君、大変需要のある刺さる良いキャラクターだと思います!読者さんが嬉しいシチュエーションもたくさんで楽しかったです。それだけでなく噛み痕を山場の演出に繋げていたのもとても好きでした!狂犬の潤君が那月ちゃんの躾には従順なのも美味しいポイントなので、なぜ従順なのか潤君→那月ちゃんへの気持ちも見たかったなと思いました。
世界帝国の女王キネカは密かに臣下であり、軍の英雄・イトラに恋心を抱いている。そんな中、彼が大きな戦争に向かうことになり…。
キャラクターの性格が絵や態度でしっかり出ていてキャラの好感度が高く、二人のやり取りも可愛いので、この二人が結ばれるといいなと応援しながら楽しんで読むことが出来ました。特にキネカのころころと変わる表情が印象的。イトラとのやり取りの中で、満面の笑顔であったり、泣き顔、ムッとした表情など、変わる感情をしっかり表情で描けていたのがとっても良かったです。また、表情のみならず絵の構図・アングルも工夫して様々な角度から描けていて◎。コマ割りも見せるべきシーンとそうじゃないシーンとで強弱がつけられていて良かったです。ストーリーも「現代もの少女まんがの王道を行く!」というより、しっかり胡色さんの世界観の中に少女まんが的美味しさが詰められていてオリジナリティが感じられました。今後の課題は画力です。線が安定していないため、雑に見えてしまうのが勿体ないです。無機物などもしっかり描きこみながら、デッサンの練習をしつつ、絵柄も今の少女まんがを研究できると更に◎。
絵がとても可愛くて細やかな表情が生き生きして良かったです。お話も纏まっていました。空気感が伝わってくる素敵な絵柄ですが、もう少しこなれてくるともっと読みやすくなると思います。
親しみやすい台詞とキャラで情報の取捨選択が出来ていて素晴らしかったです。きちんと抜きのコマも入れていて読みやすかった!画力は作品を仕上げる度に見直して改善していけば良くなっていきます。応援しております!
「猫になった。猫の心をもって」と保健室の先生に話す、灰田。先生は「じゃあ、心を持てばズワイガニにもなれる?」と聞くが…?
言葉選びや、カメラの切り取り方、物語の展開のアイデアなど、各所にわたさんの個性的なセンスが光っていました。特に最初のページの始まり方が圧巻です。仕切られたベッドの中、一人称視点で動物らしき手としっぽが見えて「一体どんな状況…?」と思わず気になってしまう画面になっています。その上で、「ねぇ先生 全ての物が遠く感じることってある?」と考えさせる台詞があり、先の予想が出来ないワクワク感がたっぷりで思わずページをめくりました。物語の中に引きこむ力のある言葉や絵がずっと続いていて、「猫になった」と話す灰田に向かって「じゃあズワイガニにもなれる?」と返す先生の会話などもとても素敵でした。また、ズワイガニという突飛に見えるモチーフが、最後は心の脱皮という物語のテーマに絡んでいたり、意味のある設定選択になっていた点も印象的。今後の課題は画力です。線や塗りが安定していないため、雑に見えてしまうのが勿体ないです。丁寧に描くことを意識してみてください。
気持ちの良い独特なテンポと雰囲気のお話でした!構図や手元の微細な表現も工夫されていて、白と黒の使い分けもお話にマッチしていています。「ノるねぇ君!!」のコマが特に好きです! 背景や小物のフリーハンドで描かれた線と定規で引かれた線の差が気になりました。思い切って定規無しで丁寧に描画する方がお話にあっているかと思います。
妄想大好きな高校生・佐藤奈々が唯一妄想できない相手…空海。他の人ならできるのに、なんで彼だけ?気になってしょうがないけど…?
デフォルメの絵含め、現代っぽくてとても可愛らしい絵柄で終始画面が華やかでした。見せゴマを決めたコマ配置、様々なアングルの絵、舞台やキャラの距離感がわかる情報描写など、漫画の画面構成も大変お上手です。妄想好きキャラという個性の強いキャラでしたが、リアクションすべてが可愛らしく、また物語の目的意識がハッキリしているため、読みやすく応援しやすい主人公でした。さらにレベルアップするために、次回はキャラの交流エピソードがあるお話を意識してみましょう。主人公の内面変化で話がほとんど進むため、ヒーローの人柄や主人公との関係性変化を知るシーンが中盤になく、空海君のキャラが薄く感じてしまいました。メイン2人だからこその展開になるよう、キャラならではの展開づくりを頑張ろう。画面全体的に少々雑な線が目立つので、もう少し丁寧なペン入れを意識しましょう。また、背景をトーンで胡麻化さず、しっかり絵を入れられると◎。世界観が明確になって、読み応えがより増します。
絵柄が今どきで可愛いです。空海君がティッシュを渡す何気ないシーンが優しい世話焼きな人柄の説明になっていて、さらに主人公の恋のきっかけになるのも自然な説得力があります。一方主人公の情報は妄想好きしか出てこないので空海君は主人公のどこが好きなのかを入れてほしいなと思いました。主人公の魅力を深掘りしてみてください。
幼馴染で二歳年上のひろに片思い中のゆず。今日こそ告白しようと心に決めていたデート中、「妹」としか見られていないと知り…?
髪や服など細かく丁寧に描きこまれていて、華やかな画面に目を惹かれました。ヒロインの表情もくるくると変わり、嬉しさも切なさもしっかりと伝わってきます。光の差し込み方や、ペンの強弱も上手く出ていました。どのページも丁寧に描かれているのですが、同じ印象を受けたので、デフォルメ絵などを差し込んだり、コマのメリハリをつけたりして画面のバリエーションを増やしていけると良いと思います。ストーリーに関しては、要研究です。今回のお話の中で無理に両想いまで描き切るのではなく、ひろがゆずを意識し始めるとことで終えた点は、恋愛のリアリティがあってとても良かったです。一方、主人公にとっては「張り切って来たもののいつも通り子ども扱いされてしまう…」というしんどい展開が続くので、やや冗長に感じました。例えば、いつも子ども扱いされてしまう主人公が、今回は女性としてみてもらえるようにあれこれ画策する…など、告白に向けて何かを頑張っていると応援できたと思います。
絵が可愛らしくて、とても読みやすいです。髪の毛や目の描き込みにも拘ってらっしゃるのかな、と思います。一方で、特に女性陣の顔の見分けがかなりつきづらいです。なので、もっとキャラクターの描き分けを意識すると良いのかな、と思いました。
平凡な少女・田中くるみの幼馴染は、欲しいものは何でも手に入れるような男。彼が別の女の子に告白することを聞いたくるみは…⁉
すっきりとして目を惹く魅力的な絵柄です。キャラクターの表情が生き生きと描けており、また、会話のテンポがとても良く、キャラクターのリアクションだったり、ギャグだったりが面白く、読んでいて楽しいです。キャラクター2人に嫌味がなく、特に男の子は強引なところもあるがそこ含め憎めない魅力的が表現できていて素晴らしいです。ヒロインの葛藤も描こうとしている点は良いですが、彼女が特に何もせず終わってしまうので、何か彼女のあふれる気持ちを具体的な行動で示してあげると、彼女が主人公であるゆえんが出てきて良いかと思います。また、ネームは読みやすく描けていますが、顔のアップのコマが多いため、単調に感じてしまいます。会話調の物語ではむしろ、飽きない工夫が必要ですので、色んな角度の絵を入れたり、背景を描き込んでみましょう。線がとても丁寧に描けているので、きっとできると思います。続けていけばオリジナルの絵柄にもなると思いますので、たくさん描いていきましょう!
ある意味失恋話ではありますが、コミカルさとキャラの魅力でしんみりとせずに最後まで楽しく読めました!絵柄も今風で背景もしっかり入り、構図にも寄り引きメリハリがあるので読みやすい画面作りができています。体のデッサンが少々不安定でたまに線が雑に感じるので、人物デッサン等で練習を積むとさらに魅力的な絵になると思います!
図書委員の青井くんのことが気になっているあまね。彼との接点欲しさに図書室に通っていたら、本を勧めてくれるようになって…⁉
圧倒的な画力を活かした見せ場の作り方が秀逸でした。特に人物の表情描写が丁寧で魅力的です。終盤の青井くんの照れ顔は、冷静な普段の性格が滲み出ている仕草や表情になっていて、グッと引きこまれました。画面構成も、見開きやアングルが工夫されていて、とても読みやすかったです。キャラ描写に関しては、良い点と改善点がそれぞれあります。まず良い点は、キャラクターに質感があることです。小さいコマであっても、ただ棒立ちではなく、手足に動きがあり、それがキャラ毎に描き分けがされています。そのため、短いページの中でもキャラクターの個性がしっかりと伝わる形になっています。一方、改善点は、キャラらしさをストーリーに活かしきれていないところです。今回のストーリー構成は、図書委員の男の子と、ヒロインが本の貸し借りをして交流を深めていくというシンプルなもの。このキャラ達だからこそ見られる展開が描けるとオリジナリティが増して、より読み応えのある作品になると思います。
知らない女の子から、なぜかストーカーされた和馬。原因がわからないまま毎日つけられていたけど、教室にいる女の子を見かけて…?
可愛い女の子がなぜかストーカーしてくる、という突飛な展開から始まり、とてもワクワクしながら読みました。全体的にコミカルでセリフの掛け合いが楽しかったです。ストーカーする理由が、意外とウブな気持ちだったのもギャップがあって可愛かったです。画面も複数のアングルから描いており、動きがあって◎。惜しいのは後半の展開。急に告白するため、お互いどこで好きになったのか納得しづらいです。また、男の子が終始自惚れキャラで、少女漫画としての男性的魅力的に欠けていたのも納得できなかった要因の1つ。かっこいい見せ場や、人間的に良いところなど、次回は読者に魅力的にうつるキャラクターづくりを心掛けて。女の子の絵は可愛らしいですが、全体的に基礎画力が未熟な印象。特に斜めの顔や体のバランス、背景の描きこみを頑張りましょう。見せ場のトーンの使い方も少し幼い印象を受けるので、他の作品を参考にセンスを磨いてくと◎。小さなコマで雑な線が目立つので、丁寧にペン入れしよう。
メインの3人の性格も見た目も確りと描き分けが意識されており会話のテンポもよくて素敵なお話でした! ヒロインが特にかわいかったです! ベタやトーンもうまく使い分けられていてパッと見で誰が居るのかがわかりやすく読みやすいです。コマによって絵柄が不安定に感じられたので沢山描いて自分の絵柄を獲得していってください。
町田さんは今日から高校二年生。登校中に出会った有住くんはツッコミどころ満載! しかも、そんな彼と隣の席になってしまい…?
インパクトのある扉絵から、終始キレッキレの4コマギャグ、ラストはちょっとドキッとするストーリーまんが構成…という、密度も満足度も高い8Pでした。主人公のツッコミも光っており、曲者の有住くんに存在感をかき消されることなく、バランスの良いコンビでした。1Pの中に4コマを2本入れる構成=基準枠内に8コマ入れることになるので、どうしても人物やセリフが小さくなりがちです。しかし、雑誌やコミックスで印刷されると、原稿用紙より更に小さくなるので、読みにくくなってしまうかと思います。今は人物のロングカット多めですが、思い切ってアップのコマも取り入れて、メリハリをつけていけるとよいでしょう。また、今後伸ばしていただきたいのは画力です。4コマと、ストーリーまんがではコマのサイズ感が違うので、髪や瞳、服の皺など、4コマの時より意識的に描き込みを増やすと良いと思います。また、トーンやベタの処理も単調に見えるので、ぜひ今のうちに色々と研究してみてください。
主人公が一筋縄ではいかない強い女で、とても花ゆめ読者に好かれそうだなと思いました。これは強力な武器なので是非今後も活かして欲しいです。小道具のギミックも工夫があって面白い!ヒーローもステレオタイプのナルシストに収まっておらず◎。ただ良い奴かと言われると謎なので、読者に嫌われないキャラ造形を意識してみてください。
主人公・志希は、クラスメートのモテるギャル男・鏡に心惹かれている。鏡に嫉妬して攻撃を仕掛けてくる輩から彼を守りたくて…?
今風の絵柄が大変可愛らしいです。キャラクター造形がお上手で、2人とも印象的なシルエットにできていて良かったです。ぜひ今後もこの絵の力を伸ばしていってください。画面処理も見やすいですが、ベタやトーン処理で華やかさを出せるとなお◎。顔のコマが続くので背景の絵が増えると画面がより見やすいです。キャラクターについては特徴づけが上手く、「モテるチャラ男」と「戦う女子」という性質を無駄なくキャッチ―に表現できていて良かったです。話運びもテンポがよくシンプルで分かりやすいですが、シチュエーションが「好きな人の敵と戦う」という突飛なものでややついていきづらいです。「喧嘩をすること」がメイン展開になっており、鏡くんとの進展や関係の深め合いがあまり見られなかったのが残念でした。メイン2人の交流を1番の軸に置き、それに合った展開作りを意識しましょう。また主人公がストレートに喧嘩するお話になっているので、読者が驚く意外なひねりやオチを用意してみましょう。
鏡くんのゆるっとした着こなしと志希ちゃんのキリッとした姿が対照的で可愛いです。健気な恋心が絵から伝わります。鏡くんの自尊心高めのセリフも女の子を褒めるセリフも自然でかっこいいです。ページ数がかなり短いのでもっとエピソードを膨らませて描けそうですし、二人の関係性や恋心に何かしら進展が欲しいと思いました。
主人公の春高は幼馴染の美読に片思い中。しかし美読には「創作物を読むと、キャラの性格や行動がうつる」という特異体質があって…。
絵柄がとても華やかで一ページ目から惹きこまれました。またヒロインの特異体質の設定がとても斬新で、その特異体質のせいで主人公が振り回されている様子も微笑ましいです。一方で設定に対する説明が前半の主な展開なので、主人公の葛藤が後半で突然のように感じてしまったのが残念です。回想を入れたりと、短いページの中で工夫して人物の掘り下げをする意識があるので、情報の取捨選択ができると、より読みやすいネームになると思います。またコマ割りも印象的で◎。一方で少し画面がごちゃついて見える部分もあるので印象付けと同時に読みやすさも意識してみて下さい。同時に作品全体通してずっと華やかな印象なので魅せ場をより立たせるように直前は抑えるなど工夫をしてもいいと思います。トーンに頼らず背景をしっかり描いた方がメリハリをつけやすいので、しっかりと背景を描き込む意識を。総合力がとても高いのでシンプルな設定でキャラの心情や背景を深掘るようなお話も、是非見てみたいです。
絵がとてもかわいいです。トーン処理も丁寧で画面が見やすく、登場人物の感情を絵で表現出来ていて凄く良いと思います。設定もユニークで、本だけじゃなく自分が書いた文章も含まれる=告白する為の装置に出来る所が面白いです。当て馬の先輩の言ってる事がド正論なので、彼も幸せになって欲しいなあと思いました。
みちるは学校のアイドル・桜路くん…ではなく、その双子の弟・麗路くんにラブレターを渡す。桜路くんに何故弟なのかと聞かれ…?
総合力がとても高く、キャラクターもストーリーもレベルが高いです。読者が疑問に思うであろう「なぜ双子の弟の方が好きなのか」というポイントも、しっかり説得力のあるエピソードが入っていて素晴らしいです。また、両想いだと分かるシーンまで描けており、満足感も高く、麗路くん側もみちるのことが好きだったというエピソードも◎。短いページ数の中でしっかりとストーリーを紡ぐことができています。キャラクターも、双子のキャラも描き分けができており、ヒロインもそれに負けない魅力があります。画力は課題の一つ。描きなれてなさ、線の不安定さが気になります。描線を丁寧に描いてみて下さい。描きこみも増やしてみましょう。また、基礎力は高いのですが、オーソドックスといえばオーソドックスなお話。この先、デビューを目指す際にはオリジナリティが必要になってきます。どこかで見たことのある物語から、もう一工夫してみましょう。橘さんだからこそ描ける作品を読めることを期待しています。
題材はよくあるベーシックなラブコメですが、手紙の渡し方から面白く台詞のコミカルさやテンポもいいので最後まで楽しく読めました! キャラも格好いいと可愛いがちゃんと描けています。線をもっと丁寧に描くと画面のクオリティが上がって良くなると思います。必要なエピソードがしっかり入っているので感情移入できて読みやすかったです!
ここは少女漫画の世界。私、佐藤花子はイケメンハイスぺ幼なじみの鈴木太郎くんと結ばれるべく、友人の村瀬くんと頑張るが……?
ギャグセンスが圧倒的です。また、少女漫画のモチーフの使い方がとても巧みで、少女漫画あるあるとしての「曲がり角でイケメンとぶつかる」という要素から、メタ的な「目が大きい」といった要素まで上手く盛り込めていたことが高評価でした。そして、圧倒的なギャグセンスを生かすインパクトのある画面作りも出来ています。特に鈴木くんが妹を吸うシーンなどは一度見たら忘れられない印象的なシーンになっていました。絵柄も少女漫画らしい可愛らしいものになっており、魅力的でした。今後の課題としてはストーリーのまとまりです。後半がやや駆け足な印象がありました。村瀬くんの一言で佐藤さんが変わるには、その前の感情の流れや伏線が重要です。例えば、主人公の「少女漫画らしさ」に囚われている理由、鈴木君の予想外の姿を見て感じたこと、そういった変化が起きる下地になる要素を描いてみてください。そうすることで、主人公の変化に納得感が生まれ、よりまとまりのある物語になると思います。
切り口が斬新で面白かったです。伏線や良い裏切りを作る工夫も見えて、この先どんな展開とオチになるんだろう?とわくわくしながら読ませて頂きました。キャラも振り切っていて最後までとても楽しかったです!
もう少しやり取りや小ボケの整理をして山場辺りにコマを広く使えたらよりギャップが出て更に輝くかなと思います!
殺し屋の女の子・ロゼッタは魔王の城に潜入中、運悪く捕まってしまう。でもこの魔王、超イケメン&なぜか結婚を申し込んできて⁉
魔王を殺したい主人公と、主人公に恋している魔王という、すれ違い設定が楽しかったです。絵柄も現代的で評価が高く、特に女の子のテレ顔や魔王ならではの冷たい表情など、キャラクターの表情が生き生きしていて魅力的でした。キャラの関係性が一目でわかる扉絵も素敵です。一方、背景の描きこみや服の装飾は不足していた印象。ファンタジーの世界観を出すには絵の描きこみも重要です。リアクションがすれ違う2人が可愛かった一方、主人公の立場が曖昧で共感しづらかったです。殺すべき魔王に恋してしまったのであれば、主人公の葛藤は「殺したいけど好きすぎて殺せない」になるはずが、前半8ページ目まで求婚してくる魔王に呆れていたり、後半では本気で殺そうとしていたり、彼女の立場に一貫性がありません。また、キャラクターが互いにどんなところに惹かれたのかも描写が欲しかったです。設定と絵柄はエンタメとして素晴らしかった分、キャラクター性に深みを出せるとさらに面白くなるはずです。
気持ちは食い違ってるけどお互いに強い矢印が向くようになっている、というキャラの配置が良いです。魔王が主人公のどこに惚れたかが分かる具体的な描写と、内面でのやり取りで距離が近づいた描写が欲しかったです。
ギャグのテンポが良く、展開もサクサク進み大変読みやすかったです! キャラの設定や絵柄も可愛らしい! 続きが気になる…。背景がもっと描き込まれているとファンタジーの世界観が出て、読みごたえが増すと思います。
冒頭の誤って卯月くんの投稿に反応してしまった部分や、好きな人にだけ見えるように設定している投稿…など、細かい道具をうまく使えていて、等身大の青春ストーリーが眩しかったです。見せ場ではコマを大きく取り、きちんと描き込んだ絵が入っているところも評価が高かったです。特に、男の子の顔が終始かっこよく描けていました。髪型や目、表情などよく研究されているのが伝わり、とても魅力的でした。一方、女の子の絵にはやや癖があるように感じます。瞳やまつ毛の描き方を色々と試してみてください。また、握りあった手同士や浴衣の首元など、細かいところの画力は高いのですが、全体的にデフォルメ絵が多く、ページごとの密度にムラがあるのが勿体なく感じました。ストーリーに関しては、王道ですが綺麗にまとまっていて爽やかな読後感でした。主人公の卯月くんへの気持ちが最後の最後で分かる構成になっているので、読者に早い段階から開示して、応援したくなる主人公作りを目指しましょう。
陰キャ女子・美影は、クラスの中でも超が付くほどの陽キャ男子・卯月くんのSNS投稿に反応してしまい、花火大会に行くことに…?
描きたいもの、表現したい世界が確りしているのが伝わってきて魅力的でした! それをどうやってよりわかり易く読者に伝えるか、シチュエーションの工夫やコマ割りで『ここ』という点にメリハリをつけると更に読みやすくなると思います。絵が少し粗く感じたので線の描画を丁寧に意識して、キャラの魅せたい部分をを伸ばしていってください。
常にマスクをしている同級生・佐々原(ささはら)愛(ちか)。そんな彼は、海(かい)の前でだけはなぜかマスクを外している。彼の美形さにときめく海だが…?
色気のある絵が素敵です。気だるげな目元や厚めの唇など、美形を表現するためのパーツにこだわりを感じました。言葉だけでなく絵でも美少年を表現できているのが素晴らしいです。ラストの思い切ったキスシーンも良い見せ場になっています。口元のアップと、キスされた主人公の表情によって官能さが増していました。また愛くんの困り顔が非常に可愛く描けています。やや上目遣いの構図で描かれているのも、主人公の視点とリンクできるようで良かったです。基礎画力はまだ伸びしろを感じますので、ぜひ磨いていってください。顔だけでなく中身も好きだと言う主人公に好感が持てたので、前半でそれを表す描写を入れると説得力が増すと思います。一方でオチの「愛くんが女性である」という展開にはやや唐突な印象を受けました。終盤に大きなサプライズを持ってくること自体は素晴らしいです。ただ途中まで完全なボーイズラブに読めてしまうので、女性と言われても納得できる布石を敷いておけると良いでしょう。
とっても楽しく読めました!! 1P毎に読みやすく、絵も丁寧、16Pに合った分量かつ、キュンキュンできる要素万歳ですばらしいです。一見女の子っぽい名前が伏線になっている仕掛けも、きちんと最後のオチに納得できる材料になっています。ページ数が多くなった時、キャラの心情面をもっと丁寧に掘り下げられたら完璧だと思います。
妹と二人で山菜を取りに出かけた主人公はそこで山の主に出会う。妹を生かすため、山の主に飲み込まれた主人公だったがその後…。
画面の密度が素晴らしいです。作品の題材にあった重い雰囲気が描き込みから伝わってきます。また魅せ場で絵のタッチを変えたり、大胆にページを使ったりなどキャラクターの感情の流れに合わせての演出が出来ています。画面からキャラクターの感情や情報を伝える力があります。一方でお話の序盤で終わってしまった印象だったのでやや物足りない印象も。魅せたいシーンと同時に読者が見たいであろうシーンもぜひ考えて組み込んでみましょう。絵柄は今回のお話に合っていましたが素朴な印象の絵柄なので題材によって調整できるようになると◎。また、お話の題材的にキャラクターを掘り下げるのが難しかったと思いますが、少しでも日常の兄妹の仲の良さやキャラクターのエピソードを入れられるとより後半の展開に読者が感情移入できたと思います。表現力や演出・書き込みが素晴らしいので、今後は話の構成やキャラクターの掘り下げなどを意識して、より読者の心を引き込めるような力強いお話を期待しています。
絵の描き込みが素晴らしいです。線画で表現することでダークさや重々しさ、主人公の悲しみがより伝わってきました。たくさん描いて自分の表現力をどんどん伸ばしていってほしいです。お話はここから壮大な物語が始まりそうな序章感があるので、ページ数に合った内容を構成する力も磨きつつ大きいページ数の物語に挑戦していって下さい!
ティファにはジョナサンという婚約者がいる。だが彼は10年前に王都へ行ったきり消息不明。ティファは彼に会いに王都へ行くが…?
画面の完成度が高いです。生き生きとしたキャラクターの表現や、ページをめくるたびにワクワクする画面構成がお見事! キャラクターの表情がころころ変わるので見ていて楽しいですし、感情が伝わってきます。一方で、絵柄から受ける印象が少し古く、勿体ないです。最近人気の作品の絵柄などを研究してみましょう。「実はヒロインが探していた婚約者は、ずっと一緒に行動していた執事の彼だった」という、読者に驚いてもらうための仕掛け・工夫の意識が素晴らしいです。前半までの、彼女と彼の軽快なやり取り、気さくな関係性が後半に生きてきます。その仕掛け自体は面白いのですが、お互いがなぜそこまで想いあっているのかが読者に分からないため、感動の再会のシーンでいまいち一緒に盛り上がれないです。彼女が10年待つほどの彼の魅力、正体を隠してまで彼女のそばにいたいと思わせる彼女の魅力が読者にも伝わるようなエピソードを入れてみましょう。そうするとストーリーに説得力が出てくると思います!
絵もお話も個性的で素敵です。背景や服、小物も細部まで描き込まれていて、眺めているだけでも楽しい画面だなあと思いました。お話もスピード感があって、主人公の性格と相まってコロコロと展開していくのが楽しいです。何で女装してたの?など細かいツッコミ所はありますが、読後感爽やかで可愛らしいお話でした。
大好きな先生が学校を辞める噂を聞いた主人公。なんとかして先生を引き止めるため、算数を教えてと頼み込んでみるけれど…?
とてもあたたかくて切ないお話でした。モノローグが魅力的で、小学生の男の子相応の感情変化が丁寧に描かれていました。涙を手で押さえてあげるシーンなど、ヤマ場に向けた感情の盛り上がり方、コマ割りや演出もお上手。何気ない日常をドラマチックに描けるのが素敵です。一方、絵柄はかなりシンプルなので、少女漫画らしい華のある絵柄を研究しましょう。横顔は立体感がありよいですが、正面顔になると目や鼻の描き方が記号的であまり立体感が出ていません。最近はどんな顔のパーツの描き方が魅力的なのか、研究してみてください。加えて、背景やキャラの服のデザインなどがほとんどなく、全体的に画面が白っぽく見えてしまうのでもう少し描きこみたいです。キャラクターが魅力的だった分、お話の展開は王道で先が読めてしまったので、何かオリジナルティのあるシーンがあると◎。また、キャラクターの名前や学年など、基本的な情報はできるだけ冒頭に出すと、読者が世界観により入りやすくなります。
絵が丁寧でデッサンもしっかりしていると思います。心理描写が自然で、主人公の成長がちゃんと描けています。絵としても最初と最後の主人公の表情の違いで成長を描けています。ただ、キャラが希薄で主要キャラ2人がモブキャラと差が無いように感じたので、もっと見ていたいと思えるキャラが作れるとさらに面白い物語になるかと思います!
高校3年生の美夜。卒業式の日、友達の計らいで片想い相手の大塚と教室で二人きりに。好きな気持ちを伝えるチャンスに美夜は…。
丁寧で可愛らしい絵が魅力的です。画力が安定していてヒロイン・ヒーローともに綺麗に描けていました。特に告白シーンなどの見せ場は表情がキラキラしており、コマの使い方も大胆で印象的な画面に仕上げられていました。一方で絵柄は少し古めに感じてしまうので、今風の絵柄を研究してみましょう。また引きのコマを増やして、背景の描き込みをすることで画面の白っぽさがなくなるので取り入れてみてください。トーンの濃淡ももう少し付けられると◎。キャラクターは、どの子も嫌味がなく応援できる子に描けていました。もう一歩オリジナリティを加えられるとより読者を惹きつけられるキャラになると思うので、趣味嗜好や考え方などで個性を出せるよう工夫してみましょう。ストーリーに関しては、主人公が恋した理由がわかりやすく描かれていて感情移入しやすかったです。ただヤマ場までの展開がストレートなので、読者がハラハラしたり、先が気になったりできるようなひねりを入れられるとより良いでしょう。
季節に合う温かくて可愛らしいお話でした! 話の運び方も気持ちの流れも自然で無理がなくて読みやすいです。主線も丁寧に引かれていて絵柄も可愛らしいです。特に女の子! 告白など見せ場となるシーンがほぼ左ページに来ているのでエピソードを入れ替えるなど整理し、なるべく「めくり」を意識するとハッタリが効いてより印象付くと思います!
幼馴染の十からの告白をずっと保留にしていた茜。自分の十への気持ちを掴み切れずにいた茜だったが、寝ている間に見た夢では…。
幼馴染で、告白済みという独特な距離感をとても上手に表現されています。また、会話やセリフから二人の関係性を想起させる作りになっているので読者が「この二人はどういう関係なのだろうか」と先を気にしながら読むことが出来ました。後半部分にしっかりと甘いシーンを入れて頂いていたのも良かったです。絵柄も可愛く、表情からヒーローがヒロインのことをすごく好きな様子が伝わってきました。一方で背景人物以外などの描写が少しおろそかになってしまっていたのでしっかりと絵を入れることを心がけましょう。人物も絵柄はとても可愛いのですが、少し簡素な印象を受けてしまうので髪の毛や輪郭の線などしっかり描くように意識してみて下さい。また、主人公のモノローグや心理描写が基本的に質問形式になっていたので読者的にもう少しヒロインの人柄が掴めるような表現ややり取りがあると良かったです。絵柄や表情・空気感がとてもいいのでそれ以外の背景であったり状況説明の部分を心がけてみましょう。
ヒロインとヒーローの距離感や感情の機微が繊細に描かれていて物語にするりと入ることが出来ました! コマ枠の幅が縦横均一だったので差をつけると読みやすくなると思います。キャラクターの線や背景はより丁寧に描くように意識して、特に一番の盛り上がりで魅せたいシーンはもっと大胆なコマ割りと極上の熱量をぶつけてみてください!
主人公の先輩はそそっかしくて、落とし物をしがち。しかしある日、顔のパーツを全て落としてくる。彼と共に顔探しをするけれど…?
「顔のパーツをなくす」という発想に加え、「他の人も顔のパーツを落としていてどれが先輩のものか分からない→主人公にははっきり分かる」という、キャラ描写への活かし方がとても良かったです。顔のないキャラというアイデア単体では普通ですが、それをもう一段階工夫して作品に落とし込んでいる点が素晴らしいです。また、淡々とした主人公と顔を落としたのにあっけらかんとしている先輩というキャラの組み合わせも、アイデアとマッチしていて面白かったです。よく落とし物をする先輩だから顔のパーツを落としたのか、この世界ではよくみんなが顔のパーツを落とすのか、世界観の描写が曖昧で読者に少し不親切でしたので次回以降注意してみて下さい。また、原稿を丁寧に描かれているのはとても良く伝わってきますが、まだ慣れていないのか線が不安定です。構図に工夫が見られる点は素晴らしいですが、画力が追いついていません。その意識のまま、沢山描いて慣れましょう。そうすれば絵柄も安定するかと思います。
台詞、絵、テンポ、それぞれの要素が絶妙なバランスで成り立っていて作家性を感じます。不思議な読み味ですが、ここぞという見せ場がわかりやすいので迷いません。今後も大切にして欲しいです。どこか不穏な空気を漂わせながらも恋に着地させる塩梅に奇妙な心地よさがあるので、よりページ数の多いミステリなど読んでみたいと思いました!
主人公・あおいの幼馴染・誠はイケメンでクラスの人気者。皆が誠をかっこいいともてはやすけど、彼からは毎日違う香水の香りがして…?
キャラの表情がコロコロ変わり、絵だけでも読んでいて楽しかったです。特に扉の女の子の表情からは、恥じらいと嬉しさを抱えた、絶妙な感情が伝わってきて◎。二人のすれ違いが面白おかしく描かれており、ギャグとシリウスの塩梅もうまく、テンポよく読みました。一方、あまり「悪い男」という設定をうまく使いこなせていない印象も受けました。冒頭の掴みとしては素敵ですが、香水の香りがする以外には「悪い男」感のある言動は全くなかったため、読者には彼の素を伝えても主人公の前では悪い男のような言動をするなど、設定を活かしたシーンづくりを目指したいです。また、特に前半ページの情報量が多いのが気になります。例えば一ページ目だけでも、学校、体育の授業、人気者の男の子がいること、剣道部の強いイケメン、主人公の登場、等々…。コマも小さく割っている分より多く感じます。情報の取捨選択や、絵のみで伝えられるものはないか模索するなど、情報の出し方は要研究です。
絵柄は女の子は可愛く、男の子には色気があってとても良いです。悪い男の匂いとして出てきた香水が実は…という仕掛けがストーリーにブレのないキーポイントになっていてよく練られていると思いました。全体的にコマ割りのメリハリが弱いのでここがヤマ場!という明確な大ゴマなどがあったらラストがもっと盛り上がると思います。
カップルが増え始めてきた高一の夏。陽花は片想い中の宇尾野を花火大会に誘ってみたものの、「先約がある」と断られてしまい…?
等身大のモノローグ・エピソードが見事でした! 例えば、冒頭の『高一、夏 少し余裕が出てくる時期 恋 とかもしちゃったり』というモノローグや、Instagramの投稿で相手のIDをメンションするというエピソードが、青春そのもので作品を輝かせていました。主人公も一生懸命で、応援したくなる好感度の高いキャラに仕上がっていました。最初から主人公と宇尾野が両片思いだということが分かるので、安心して読み進めることができる一方、若干の物足りなさも感じます。「起承転結」の「転」にあたる部分のエピソードや事件をきちんと描くようにしましょう。また、ラストがやや駆け足になってしまったのも少し勿体なかったです。絵に関しては、とても可愛らしい絵柄で画面作りも丁寧にできていました。たくさん出てくるモブの生徒たちの髪形や表情なども工夫されていて素晴らしかったです。高校生にしては男の子が少し幼く見えるので、瞳の描き方や輪郭などを中心に、女の子との差を描き分けてみてください。
等身大でとてもかわいいお話でした。テーマを花火大会一つに絞った事で、お話が散らからずに上手くまとまっていたと思います。インスタや手持ち花火等の小物の使い方も上手いと思いました。一方でデッサンが少し気になります。例えば扉絵ですが、深く折り畳んだ肘の内側に人間は入りません。でもトーン処理は丁寧で、凄く良いと思います。
赤ずきん・メイジーの兄であるブランシェットは人気者の妹が憎くてたまらない。ある日おばあさんのお見舞いに行く道中、メイジーが狼に襲われて…。助けるも、お礼を言う際のあざとさが気に喰わないブランシェット。狼に本当はシスコンなのではと疑われるが?
キャラ立ちが見事です! 妹を憎んでいると思いきや、愛情の裏返しであるという主人公の強烈なシスコンキャラが◎。回想のずきんをあげるエピソードも、主人公の本音が端的に伝わるもので良かったです。またエッジの効いたギャグセンスが素敵です。狼や、妹を誘惑する男に対しての辛辣なツッコミが面白く、淡々とそういったワードを並べているのも水紅さんの作風として確立していて良かったです。緩急のつけ方も秀逸なので、飽きることなく読めました。全体的にまとまっていますが、大きな展開がないためこじんまりとした印象になっていました。ストーリーは、時には読者を惹きつける大胆さも必要です。絵柄はもう少し華やかさが出ると良いでしょう。どちらかと言うと少年誌寄りの絵に見えるので、描線や画面処理の柔らかさを意識して、少女漫画の画風を磨いていってください。
とても面白かったです。声に出して笑いながら読ませていただきました。テンポが抜群でセリフのチョイスにセンスがあります。16Pにぴったりのボリュームで満足度も高く、いちいち面白かったです。背景が白めなのでもう少ししっかり描けると臨場感が出てさらに面白くなると思います。愛すべき拗らせシスコン! 他の作品も読んでみたいです。
16歳の衣織はある日隣の家に住む小学生・新菜くんに告白され、戸惑いつつもいつものように返事をすると、頬にキスをされてしまう。それで新菜くんの好意が恋愛的なものだと分かった衣織は新菜くんのことを意識し始めてしまいいつものように接することができず…。
可愛らしい絵柄と新菜くんのショタという属性がとてもよくマッチしています。ストレートに愛情を伝えてくる様子や、小学生ならではに頑張っている様子もとても可愛く描けていました。一方で小学生なのにという部分から離れた新菜くんの要素があまりなかったのが残念でした。主人公の衣織ちゃんも好感度が高いキャラクターにできているので、もう一歩この子らしさをプラスできるとより読者の心をつかめると思います。また、見ごたえのあるシーンを大きく配置できていて素晴らしいです。魅せ場の意識がしっかりあることで物語の読みやすさに繋がっています。お話の展開はやや王道な流れではあるので、そこにメインの2人ならではの展開を盛り込むことを意識しましょう。絵柄が可愛く、読者に読みたいと思わせる力があると思うので、設定や筋でお話を進めないよう意識しましょう。
絵柄が達者で丁寧で非常に読みやすかったです。冒頭2Pの掴みもとても良い。ストーリー面では起伏が乏しいため、「転結」を特に意識してみましょう。関係性の描写が希薄なため、感情移入しにくかったのも惜しいです。
描くべき心理をきちんと押さえながら16ページという短いページ数にきっちり収めているとことが素晴らしいと思います。絵も丁寧で好感が持てます。引きとアップの使い分けがうまくとても読みやすかったです。
友人4人でアイドルを目指して上京、それから2年経つが一向に売れる気配もなく、ド底辺で活動しているアイドルグループ・You May PRINCE。他のアイドルがSNSから人気急上昇したのに乗っかり、「アイドルの裏側」をお届けするアカウントを始めたたところ…?
アイドルのメンバー4人の会話が面白く、ページを次々めくらされました。キャラの表情や反応がいちいち大げさで面白く、まさに賑やかなユーチューバーの動画を見ているようなノリで、楽しいです。ある1人のメンバーの「プリチュアおたく」のエピソードなども振り切れていて◎。その1人の裏側のみしっかりと描写されますが、他メンバーの裏側はダイジェストでなんとなくしか分からないのが勿体ないです。ページ数の問題もありますが、それぞれSNS上でどんなキャラクター売りをしているのかをもう少し具体的に描写してあげると良いでしょう。また、クズ×アイドルは割と見たことのあるネタだという印象があるので、別の切り口にしてあげても良いかもしれません。オチはとても上手にまとめられていて良いですが、途中のシーンでより読者を飽きさせない工夫が出来るとなお◎。
アイドルが売れるため自ら裏側を発信するというアイデアが面白いです。4人のキャラクターや掛け合いも良く、楽しく読めました。ギャップもありつつアイドルとしての題材もブレていないので締めへの向かい方も説得力があります。折角キャラが沢山いるので、ボケ数など整理・調整してあげるともっとそれぞれが光るのではと感じました!
主人公・#200016は人間の恋を成就させるキューピット。でも、そもそも恋とは何かがわからない! そんな彼女が出会ったのは、初恋を叶えたい男の子・ゴロー。普通の人間には見えないはずの自分が見えるゴローに運命を感じ、彼に協力することにしたけど…⁉
キューピットという設定をうまく活かしたお話でした。とにかく主人公のキューピットが可愛らしかったです。特に、ラストの見開きで泣きながら矢を射っている姿が魅力的でした。この見せ場のシーンに向けて、ストーリー展開や演出が考えられているのが伝わってきて、その総合力の高さから1位になりました。画面も動きが出るよう様々なアングルから切り取っており、工夫されています。後半、相手の男の子に恋をする過程が急展開になってしまったのが惜しいところ。主人公は彼のどんな表情、仕草、価値観などに恋をしたのか、読者が共感できるよう描写しましょう。例えば名前とは主人公にとってどんな存在なのか、だからどうして嬉しかったのかなど。女の子は可愛く描けているので、次回は男の子を頑張りたいです。肩幅、首、手など男性的骨格を感じるとよりかっこよく映ります。
最初のページで「恋ってなんなの…」と主人公の問題提示がハッキリとされていて好感が持てました! キャラクターの線は細くて美しいのですが、コマ枠の太さが勝ってしまっているのでどちらかに寄せると良い感じになると思います。全体的に変形コマを減らし、コマとコマの間隔も揃えると更に読みやすくなるので試してみてください。
男装が趣味の幼馴染・透に告白された菊生。男性アイドルオタクの菊生は、彼女自身のことを恋愛対象として好きなのか、彼女の男装姿を「推し」として好きなのか分からず悩んでしまう。一方、二人が入学したばかりの高校で、透は周りからモテモテのようで…!?
応援したくなるキャラクターが魅力的です。透と菊生、「なぜお互いを好きになったのか」がエピソードとしてきちんと描けていました。中身までイケメンな透が、恋をしたきっかけを話す時だけ表情を隠すところも大変可愛らしいです。ラストも、この二人らしいオチで良かったです。一方、「幼馴染」「男装」「男性アイドルオタク」「少女漫画好き」…など、要素が多く情報過多の印象も受けました。告白を受けた菊生が悩んでいる理由が、推し心か恋愛か判断できないからなのか、男装姿で告白されたからなのか、幼馴染だからなのか…色々と混ざっているように見えてしまったので、主人公側の葛藤(悩み)を一つに絞るようにしましょう。絵に関しては、画力は十分安定しています。人物は目が寄りすぎないように注意しましょう。魅力的に見える表情の描き方を研究してみてください。
キャラを第一とした作りでふたりの可愛い姿が沢山見られて満足度が高かったです! 全編通して読みやすくはあったのですが、頭と最終ページ以外、ぱっと見のコマ数が同じで印象が薄くなっているのが勿体無いです。「好きなものを真似してみました」など大事なシーンは思い切ってコマを削り大きく描くとメリハリが効いて良さが伝わります!
人の心が読めるテレパスである主人公は、クラスメートの風見が未来予知能力者だと気付く。はじめは予知の恩恵にあずかっていた主人公だが、徐々に風見がその力ゆえに周りから不気味がられていることを知る。同じ能力者であるよしみから、心配してしまうが…?
表情の切り取り方やカメラワークにセンスを感じます。淡々とモノローグが紡がれていくと思いきや、「ちっさいよな」の場面で表情のアップ。画面の切り替えが上手く、ここで一気に感情移入させられました。「そういう言い方だったもんね」というセリフ自体は抽象的なのですが、彼から好きがにじみ出ていたのだろうな、と読者に分からせる表情の描き方で秀逸だと思いました。ドライに見える主人公が涙するシーンは、応援したくなるいじらしさがあります。それを別の男子キャラが見ている描写も、次なる恋の予感が伺えて上手です。今回は短いシーンを切り取ったお話だったので、もう少し長いページで、ストーリー要素があるお話も読んでみたいです。キャラクターの個性も強化できると良いでしょう。このキャラが気になる!と思わせる挙動やエピソードを導入から入れてみましょう。
主人公の失恋という切ない話を雰囲気よく自然に読ませるストーリーだと思いました。失恋の悲しさだけではなく新たな未来を予感できそうな終わり方もすてきです。今回のお話は短いページだから光るタイプだと思うので長いページを描くときには人物像等にもう少し厚みと起伏が必要かもしれませんが、作風を活かしつつ描き進んで下さい!
商人の親を亡くし路頭に迷うアドレアは、毒鳥を育て毒を作って生計を立てるヴィチェロの家に住み込みで働くことに。ある夜、彼女はアドレアを毒鳥を育てる大きな籠の元へ連れて行く。アドレアは彼女にもっと商売っ気を出せと提案するが拒否され、喧嘩になり…。
扉からうかがえる完成度の高さ! 今回の応募作品の中で圧倒的なオリジナリティでした。編集部員満場一致の1位です。冒頭から独自の世界観が確立され、かといって設定のみを追うわけではなく、主人公とヒロインの関係性がおいしくグイグイ惹きこまれました。満月の下で毒鳥の籠の前に佇むヴィチェロや彼女に肩掛けをかけるアドレアなど、印象に残る構図が描けているのはすごいことです。世界観に説得力を持たせる背景の書き込み具合や、細かいコマが続くながらも抜群の間の表現、雰囲気たっぷりの影トーン、どれも素晴らしい! 二人の関係性がおいしいだけに、ラストの展開が駆け足で余韻が少ないのがもったいなかったです。世界観の説明がややこしかったり、描線が荒い&画力向上の余地があったりなど改善点はありますが、より長いページ数での次回作をお待ちしています!
内容が濃く17ページ以上の読み応えがありました。作者の好きなものが感じ取れる作品は得てして魅力的だと思うのですが、それと同じ感触を鳥の描写や作品の雰囲気に持ちました。セリフやモノローグがどのキャラのものなのか分かりづらいのが勿体無いです。できるだけ視点を固定するなど読みやすさに気をつけると更に良くなると思います!
村にある唯一の中学校の最後の生徒になった小坂。小学校の時からずっと一人で何においても張り合いがないと漏らす小坂に担任の井上先生は、学校の教師たちが先生兼クラスメイトになると提案し、小坂は教師たちとクラスメイトとして学校生活を送ることになり…。
冒頭のインパクト◎。興味をひかれる導入から読みやすい絵柄とテンポ感で楽しく読むことができました。中盤からのコメディの畳みかけもうまくそこからきれいなオチにもっていく構成も上手。話のテーマも爽やかでキャラクターに嫌味もなく好印象。女の子の絵柄が特に可愛かったです。中盤以降先生たちのキャラが立っていて良かったのですが、今回のようなきれいなオチに持っていくには、もう少し中盤での関係性や心情の変化を描写した方がより感動できたかと思います。一方で今回のようにページ数が少ない中でまとめる際には中盤のコメディテンポを活かしてネタ的なオチでまとめてみるのも◎。人物は可愛く描けていますが、背景の空間が広く見えてしまうので、注意しながら練習してみて下さい。また全体的に胸から上の描写が多いので、動きを付けた画面作りを心がけましょう。
冒頭から引き込むコマ運び、セリフ運びで「読ませてくれる」作品だと思います。生徒が一人という万人が体験しなさそうな内容でも共感しやすいお話です。周りのキャラクターによって最初と最後で小坂さんに変化がみられ、読後感もとても良かったです。見せ場のシーンなどは特に華やかさを意識して作画するとよりぐっとくると思います!
人魚が陸に進出した世界。主人公の人魚・氷室さんは、人間と同じように学校に通っていた。人と会話が出来ないので、ひとり屋上でのんびりしていると、そこに同じクラスの問題児・山下くんが現れる。反抗的な態度で皆に誤解される彼を不憫に思った氷室さんは…。
「人魚」というよくあるテーマですが、外見も設定も独自色が強く◎。潜水服のようなヘルメットは目新しさあり、可愛さありで目を惹きました。ラストで彼を救う為にそのヘルメットを壊すシーンも、設定と物語がちゃんとリンクしていますね。自分だけの世界観を形作れるのがファンタジー漫画の強みです。これからも活かしていって下さい! ただ、設定まわりは説明不足ぎみ。特に、彼女にとって自身のヘルメットを壊すことが何を意味しているのかが分からないので、読んでいて気持ちが乗りづらいです。人魚とはどういう存在なのか…等、物語を理解するうえで必要な情報は、必ず読者が理解できるように心がけましょう。冒頭が観念的な説明で始まるのも、敷居の高さに繋がっています。主要キャラがふたりとも一癖あって面白いので、せっかくならその点を冒頭からアピールしてみては?
絵が綺麗でとても読みやすいです! 人物だけじゃなく、水の表現やトーンワークが細かいのも好感が持てます。設定も独特で面白いですし、2人の今後を読んでみたいなあと思いました。ただ、キャラクターの背景があまり分からないのと、言動に一貫性が無いので、読んでいて少し置いてきぼりに。「伝える」事を意識すると良いかもしれません。
彼氏を作って青春を謳歌したい主人公。「宇佐美が彼女ならきっと楽しい」と言われて浮かれていたものの彼にはすでに彼女がいた!「もう思わせぶりな言動に振り回されない!」と意気込むものの、仲のいい男友達・加地がどうやら自分のことを好きなようで――?
最初から最後まで主人公の表情がコロコロ変わって、大変可愛らしかったです。ドキドキするシーンと笑えるシーンがテンポよく交互に来て、最後まで飽きずに読むことができました。最後の告白シーンの構図もとてもドキドキしました。ギャグのデフォルメ絵も可愛らしく、線も丁寧で綺麗でした。一方、ストーリーは主人公が意図していない出来事がきっかけで加地くんとの距離が縮まるので「棚からぼた餅」な展開にも見えてしまいました。主人公が何か頑張る場面や、成長したと分かるポイントがあるとなお良かったです。また、作中で使われている「リア充」や「非リア」等という単語ですが、今の高校生にはあまり使われていないかもしれません。現役の高校生事情にアンテナを張って情報収集してみると、さらに多くの読者さんに楽しんでもらえるような作品ができるかと思います。
主人公の口調が可愛らしさを引き出していてとても魅力的です! 髪の描き方もやわらかそうで感情表現にも役立っていて素敵です。コマ割りは文字が多すぎる印象を受けたのでもう少し全体の情報量を簡潔にし、その分大事なコマの前に『間』を作れると主人公たちの感情の機微が読者により伝わって物語に入り込むことが出来るかと思います。
主人公・西宮が憧れるのは、「高等部の宇宙人」と呼ばれる清水桜子。彼女は自作の小説を書いていて、いいシーンを書くためなら木にも登る変人だ。クラスメートたちは茶化してばかりだが、西宮はいつでも好きなことを貫く彼女を尊敬し、惹かれていた。想いを馳せるある日、彼女の小説を遊び半分で見ようとしている生徒たちを発見して…?
キャラクター描写が見事! 特に清水先輩のキャラがよく立っていました。「高等部の宇宙人」という二つ名に相応しい奇人っぷりで、キザな口調や木登りという行動にインパクトがありました。ただ変人なだけでなく、それらの行動が小説への情熱から来るものである、というのが理念を感じられて良かったです。飄々としたキャラな分、好きなことを貫くという熱い姿が非常に格好よく感じました。また、感情移入がしやすいのも素晴らしかったポイントです。主人公が先輩に憧れたきっかけが、同じように好きなことをバカにされた経験があるから、というのはとても説得力がありました。エピソード作成が見事。誰もが抱えたことのある悩みを、エンタメを交えつつ昇華できるのは素晴らしい力です。基礎的な画力を磨きつつ、魅力的なキャラと感情表現を武器に、今後もまんが制作を頑張ってください!
導入が端的で物語にスッと入ることが出来ました。全体的にとても読みやすかったです! エピソードの積み重ねが良かったぶん、「先輩のような人になりたい」に対して「一生かけてもなれる気がしない」で終わってしまうのは勿体無いと思いました。恋心に気付くとか、少し近付けたとか、もう一段階明確なプラスの変化にするだけで読者の満足度が桁違いになると思います。
キャラクターの見せ方がお上手な作品でした! 破天荒な先輩の性格を、セリフだけではなく表情や行動を交えて表現していて、彼女に憧れる主人公の気持ちに共感できました。モチーフの小説を物語に絡め切れていないので、次回はその点も意識を!
主人公・菜子は電車に乗っていた。母が実の母でないと知ってから、家での会話は減り、周りの楽し気な会話を煩わしく思うようになった。「みんな消えればいいのに」そう願うと辺りには誰もいなくなり、見知らぬ少女が座っていた。不審に思いつつ手を引かれ外を見ると、電車は空を飛んでいた。少女の正体を尋ねると、少女は菜子の母と名乗り…。
主人公の悩みと気持ちを丁寧に追いつつ、可愛い絵柄と華のあるトーン使い、ファンタジックな動きのある演出でぐいぐい読ませる作品でした。主人公の悩みは母と思っていた人が実の母ではなかったというヘビーなものでしたが、内容説明に尺を割きすぎず、主人公の切ない心情へフォーカスを当てる演出やモノローグが多く描かれ、情報の取捨選択がお上手でした。また夜空を走る電車や少女姿の亡くなった母に会うなど、幻想的なイベントが読み口の良さに繋がっています。主人公が悩みを乗り越えて前向きになるオチも良かったです。ただ、絵柄と相まって、やや子どもっぽい話に見えてしまうのが気になりました。キャラを年齢で描き分ける等の画力向上や、テーマ(今回だと「キラキラしたい」)と展開をリンクさせる構成を考えられると、改善されると思います。次回作で気を付けてみてくださいね!
主人公の切なさと成長が込められた優しいお話でした。電車の中がファンタジックな情景に変わる演出は童話のようで、物語の雰囲気をより盛り上げていると思います。髪の毛の細かな描き方や主人公が車内でリュックを前がけにしている描写が特に好きです。心理描写を大切に描きたい作者さんなのかなとお見受けしたので、今後も存分に伸ばしていただきたいです!
画面作りにセンスを感じる作品でした。夜空を走る電車など、幻想的な演出・絵がお上手で、主人公の切ない心情に自然と引き込まれてしまいました。追い求める「キラキラ」と電車の演出がもっと強くリンクするシーンがあると更によくなると思います!
主人公の秋はおつかいに出ていたところたまたま2週間前に転校してきた長谷川さんを見かける。女ったらしの先輩に追いかけられ逃げている様子だったが、ひとまず撤収しようとした時長谷川さんとぶつかってしまう。おびえたような表情を見た秋は、長谷川さんの手を取り一緒に逃げることに。初めて会話した長谷川さんは想像とは違って…。
制限のあるページの中で出会いがあり、展開があり、驚きがあり、とネームの構成がとても巧みでした。しっかりお話が進んでいるのにコマも多すぎることなく、情報の取捨選択がうまく出来ています。またキャラクターの表情がとても魅力的で、秋も長谷川さんも好感の持てるキャラクターでした。最初は一回スルーしようとするも結局助けてしまう秋は読者からするととても身近に感じられると思います。そういった小さな思考をキャラクターがちゃんとしていることで血の通ったキャラクターに出来ています。一方で読者を驚かせようという意識はとても大切ですが、もう少し伏線を入れてあげた方が良かったかと思います。最後の種明かしでそれまでのお話の印象がガラッと変わってしまう場合は伏線を貼っておいた方が読者に親切だと思います。絵柄や画力は更に研究を重ねて沢山挑戦してみてください。
面白かったです。続きが気になります! 読みやすいシンプルなコマ割りに好感が持てました。絵柄は可愛くて人物デッサンも丁寧だと思います。「半分こ」のシーンに素でときめきました。「ひとりは怖くない」というヒロインに主人公が親近感を覚えるシーンは、主人公側のエピソードの描写がないため共感しづらかったです。ラストはオチも良くいい意味で裏切られました!
男女逆転にまんまとやられました! ボーイッシュ、美人…絵にもセリフにも説得力がある丁寧な描写でイメージを作っていて、読者をラストのどんでん返しまでうまく誘導できています。「こう読んで欲しい」という意図が明確に伝わってきました。
主人公の詩織と同級生の彩は、小さい頃からいつも一緒にいる幼馴染。周囲から、「なんで付き合ってないの?」とからかわれた詩織は、流れで彩に告白して付き合うことに。しかし二人の関係性は今までと変わらず、ただの友達同士のようで…。
とにかくネームが上手! とても14歳とは思えない感情描写でした。お互いに相手のことを好きだと自覚しながらも、それまでの関係を変えることが怖くて一歩が踏み出せない、踏み出した時にはもう遅すぎる…という切なさのあるテーマ選びでしたが、ご自身の作風によく合っていのだと思います。互いに複雑な感情を抱えているため難しい題材だったと思いますが、ラスト数ページの互いの表情、回想だけでそれを伝えきったのは見事。まだお若いのでこれからですが、描線の粗さは気になります。線が太い場面と細い場面があり、意識的に使い分けられているのかもと思ったのですが、意図が分かり辛く…。ギャグゴマなどは変えても構いませんが、それ以外は出来る限り統一すると読み易いです。トーンももう少し使えると画面が締まって良いですね。
幼馴染だからこその切ないお話で、詩織君の気持ちが最初と最後で変化している過程が丁寧に描かれていると思います。告白→返事の間の取り方や、秒針の演出など素敵でした。最後自分の気持ちに気付いた詩織君の感情が表情でも語られていてより切なくて良いです…!絵は線の強弱を意識するともっと画面が締まる気がします!
幼馴染男女の繊細な内面を、説得力ある些細なエピソードから引き出すまんがセンスが見事。14歳の若さにしてこれを描けるのは大変期待が持てます! 線の強弱や立体感、質感など、画力面も磨いていってください。絵は描けば描くほどうまくなるので!
男子高校生の悠斗は彼女の雪の為、日々病室へ足しげく通う日々だった。雪はナルコレプシーという病気でふとした瞬間に眠ってしまうという。そんな彼女が目覚めた時に寂しくないよう、いつも彼女の側に居たいと思っている悠斗だけれど、ある日、雪が自分の名前を呼びながら泣いている現場に遭遇し、雪が自分に罪悪感があることを知って…。
短いページ数の中で自分が描きたい題材・テーマをしっかり詰め込むことのできていた作品でした。途中で読者的にもドキッとさせるようなシーンを差し込んだり自分の描きたいものの中で読者を楽しませようとする意識が感じられました。主人公のモノローグも明快で分かりやすかったです。変形ゴマなど演出にもオリジナリティがありました。しかし、一ページの中でこまごまとした変形ゴマを重ねると読み辛くなるので、コマ割りやカメラワークにも意図をもって取り組むといいと思います。またアップのコマが多く人物位置が把握しづらいのが残念でした。絵に関しては、人物全体のバランスや背景パースの取り方など、練習すればさらに画面が見やすくなると思います。絵柄は華やかですが、落ち着いた絵柄に見えるので色々挑戦しつつ、なるべく多くの作品を原稿にして、レベルアップしてください。
ヒーローとヒロインがお互いを大切に想い合っていて、とても好感が持てます。 好きだからこそ、揺らいでしまう。そんなヒロインの葛藤もとても良かったです。しかしだからこそ、何故お互いが惹かれ合ったのか、エピソードが無いと説得力に欠けてしまってもったいないなと思いました。絵柄は線がキレイで見やすいですが、横顔のクセが少し気になりました。
「雪」という名に対して春の象徴「桜」を持ってくる…モチーフの使い方に素敵なセンスを感じる作品でした。「興奮すると寝てしまう」という設定が上手く活かしきれていないので、もっと設定をスリム化できるようなネーム作りを目指してください!
女子高生の牧野は、物理教師の守屋が好きで、物理準備室に勉強を教わりによく訪れていた。並んで座るとき、牧野は右利き、先生は左利きで手同士が近く、頭を撫でられたりもした。牧野は先生の左手が好きだった。先生が結婚すると知った牧野は、準備室に来るのを辞めると決めた。結婚指輪をつけるようになった左手を見て、牧野が思うことは…。
演出のレベルが高い作品でした。たとえば、牧野が先生を好きなことがハッキリ文字にされるのは話の中盤ですが、2人の距離が近いときの効果トーンや、先生を見つめる牧野の横顔のコマを挟んだり、表情で彼女が先生に恋をしていることが言わずともわかるように描かれています。登場人物の心情が、セリフ等文字に頼らず表現されています。また、今回のお話では、特に左手の使い方がお見事でした! 右利きと左利きだから並んで勉強を教わるときに距離が近くなる…というエピソードはリアリティがありました。また、その左手が好きだったのに、そこにはまる結婚指輪で失恋を確信する演出は切なさがよく表れていてお見事です。ただ、背景の入れ方や人体の描き方、ツヤベタの入れ方など、まだ描き慣れなさがあり、成長の余地を感じます。どんどん作品を描いて、レベルアップしていってください。
テーマとタイトルがハッキリとしていて最初から最後までブレることなく16Pにまとめられていて、すいすいと読ませて頂きました。雰囲気のあるコマ割りと見せたい部分がしっかりと描かれている点が特に素晴らしいです! ただ少し線とツヤベタの粗さが気になってしまったので、線に強弱をつけて丁寧に仕上げてみてください。雰囲気に合った美しい線が見つかるかと思います!
左利きの相手の左側にあえて座る…という主人公の行動の甘酸っぱさに共感! 冒頭の掴みとしてはいいですし、その左手に結婚指輪が…という展開もモチーフが一貫していて、切なさを上手に表現できていました! 絵柄が古めなので、絵の研究も是非!
主人公のあかりはコンビニで深夜バイトをしている。仕事中の一番の楽しみは、自分の推しアイドル、榛名くんがたびたび買い物に訪れること。もともと感情を表に出すのが苦手な上に、推しが目の前にいるという緊張感で、彼の前でいつも硬い表情しかできないことに悩むあかり。ついにある日、榛名からそのことを直に指摘されてしまうが…?
ネーム、画力、演出、全てにおいて高レベルの作品。審査員一同、満場一致の1位でした。画力に関してはプロに近いレベルです。ネームは非常に読み易く、細かいエピソードに至るまで意図が明確で、よく練られたものであることが伝わります。何よりも素晴らしかったのは、キャラクターの描写。等身大の主人公で感情移入がしやすく、彼女の推しへの愛も手に取るように伝わります。それによって、男の子の魅力やかっこよさが、より強く読者に響いていますね。強いて言えば、気になるのはストーリーの面。ストラップのくだりが過去の2人の接点として描かれますが、その話を聞いた彼女がどう救われたのか…がやや分かり辛いです。これでは、単純に「推しが自分のことを知っていてくれた」というだけの意味合いに見えてしまうかと。主人公のコンプレックスが解消される様は丁寧に描けるとベターです!
面白かったです! ニヤニヤしながら読みました! しっかり実力とサービス精神のある方なので、今後の商業誌における漫画作りの話を。どんな読者さんが読むのか想定して、その人が読んでいて何を楽しめる漫画なのか、を常にこれからも意識して描いていってください。そこを見失わなければきっと大丈夫だと思います。担当さんと一緒に頑張って下さい!
初投稿ながらも高い画力に大変驚きました!この画力で表情をしっかりと描くことにより、説明はなくともどんな人物像か読者に伝わる理想的な作り…。今度は長めのストーリーに挑戦して、さらなる感動作を目指してください。楽しみにしています!
男子高校生・伊織のクラスに転校してきた三木。人気者の彼は伊織にも優しく接するが、クラスメイトは止める。それは、伊織の恋愛対象が男性だからだと言う。伊織は二度と太陽のような人気者に憧れないので逆に誰も自分に関わってほしくないと思っている。実際、他人を排除するように振舞う伊織だったが、三木の言動に心を揺らされており!?
雰囲気とリズムのいいモノローグに惹かれました。口数が少なく、他者と関わるシーンが少ない主人公でしたが、モノローグやセリフ回しのセンスで文字を読まされている感なく、心情がよく伝わってきました。自らを「衛星」と称して、人間関係を天体に喩えることがストーリー内で一貫性があり、モチーフをうまく作品に落とし込めていました。また、演出力も高かったです。特に扉ページはタイトルをよく表現できていました。1ページあたりのコマ数は少ないものの、構図や演出に工夫があり、飽きさせない画面作りをしようという姿勢が伝わってきました。ただ、見せ場となるシーンや表情には目を惹かれるものがある反面、少し雑に見えてしまう部分もありました。線をきれいに引く、繋げるなどのペン入れを意識したり、他作品のトーンワークを参考にしたりなどでさらに魅力的な絵を研究してください。
まず絵に色気があって目を惹きます。トビラや演出もセンスが高い!と思いました。全体的にしっとりした雰囲気がありつつ、冒頭の主人公のモノローグがラストではプラスの感情で回収されていてまとまりよく読めました。ただ主人公のモノローグだけでストーリーが自己完結しているので、主人公の行動や感情が能動的なお話も読んでみたいです!
比喩表現がお上手! キャラが星に喩えられていて人物像が飲み込みやすく、さらにそれが作品全体に情緒を生み出しています。目の色の話で締めますが、色がない1色原稿では伝わらないのが残念。色も何かに喩えるなどできたら良かったかもしれません。
高校2年生の主人公・葵の10歳年上の兄・光輝が亡くなった。葬式からしばらくして、青年・一帆が家を訪れる。葬式で一帆が光輝とパートナー関係だと打ち明けた際、カミングアウトに混乱した葵たちの母に追い返されたため、葵と一帆の再会は時間を要した。縁側で、2人は光輝との思い出語りを通して、光輝を喪った寂しさを分かち合い…。
この題材に挑戦しようというオリジナリティ、短いページ数に過不足なく収めきった構成力がお見事。タイトルも内容に合っていて良かったです。兄と一帆の関係に対して、祝福する主人公、混乱し反応する母親と、複数の立場の人間を配置することで話にリアリティが出ていました。かつ、大切な人の死という主題を選びつつも、物語の最後は主人公の心情が前向きに描かれていて、読後感が爽やかだったのも好印象です。モノローグや表情はもちろん、手の仕草や人物の動きでキャラクターの気持ちが丁寧に描写されていました。短いページ数と展開の多さ的に難しいところではありますが、キャラクターの個性が見えづらかったのが今後の課題と言えます。読者が好きになれるような個性を、主人公をはじめとしたキャラクター達に持たせる工夫を。次回はぜひ、もっと長いページ数でチャレンジしてください。
線が丁寧に描かれていて絵としてのクオリティはバッチリだなと思います! また、会話メインですが俯瞰やアオリでの構図の工夫も感じられます。特に会話中のイマジナリーラインを突然超えないカメラワークにとても好感が持てました!話については、この設定ならではのカタルシスが、演出や構成の仕方でもう少し強く描けたのでは?と思います。次回作も頑張って下さい!
兄の死と兄の親友の来訪…。少しずつ何があったかが明らかになっていく展開で、話に引き込まれました! 心情描写が丁寧で、主人公が悲しい事態を経つつも、少しだけ前向きになる…というラストで○。二つの意味合いを持たせたタイトルも良いですね。
物理学が大好きな主人公・しりかは熟考した告白文句で幼馴染で文学オタクの成斗に告白する。しかし成斗には告白が通じず肩透かし。2度目の告白はハードルが高いと尻込みするしりかだが、成斗が引っ越すと聞き、勇気を出してバレンタインに再度告白することに。だがチョコを渡す直前「手作りチョコは重い」という成斗の発言を聞いてしまい…。
意表を突くトピックと恋する女の子の共感できる心情を非常にうまく組み合わせていました。また物理学好き、文学好きという主人公たちのキャラ付けを終盤に至るまで利用しながら展開を作ろうとしていた点もとても良かったです!絵はまだまだ拙い部分もありますが、総じてキャラクターの表情がとても魅力的でした。彼を好きになったきっかけの回想など、情報の出し方がやや強引な箇所があったのでお話の流れの中で自然に見えるように意識するとより良くなると思います。またキャラクターの心情でリサーチや漸近線といった印象的なワードを組み込むのはとても良いのですが、ワードに引っ張られて心情を全部説明するようなモノローグになってしまうと読者の感情移入の隙が無くなってしまうので、説明し過ぎないよう意識できると◎。また、男性キャラの魅力が伝わるような展開を意識しよう!
主人公の日向は、幼馴染の大親友・唯のことが大好き。しかしある日、唯が突然に「今日から男として生きることにした」と宣言! 驚きつつも、自分達の関係は何も変わらない、という唯の言葉に安堵する日向。しかし、容姿端麗でクラスの人気者である唯に、「彼女」がでてしまったら、自分が唯の一番でいられなくなることが不安になってきて…。
言葉回しのセンスに脱帽。以前、BCに投稿いただいた作品もそうでしたが、ほんわかとした可愛らしいギャグと、シリアスな台詞・モノローグとの対比のつけ方が非常に上手く、キャラクターの感情がより強く伝わってきます。ネームも上手。コマの強弱のつけ方がはっきりしていてテンポも良いですし、見せたいコマをしっかり見せられています。キスシーンなど、見せ場の意識も◎。気になったのは絵の部分。絵柄は可愛いのですが、全体的に線の粗い部分と背景の白さが目立ちます。基礎画力自体は決して悪くないと思いますので、画面作りの勉強を。ストーリーはあともう一歩。主人公がなぜそこまで唯に執着するのかが分からないため、彼女の感情の重さについていき辛いです。幼馴染ということであれば、例えば過去エピソードを入れるなど、キャラの感情に説得力を持たせる意識を持ちましょう。
剣と魔法のファンタジー舞台でイケメン達と恋をする乙女ゲームの世界に転生した女の子。しかし、主人公ではなく悪役令嬢になっていた。悪役として振る舞わないと、推していたキャラが不幸になると気づき、悪役として過ごすことに。露悪的な行動をするたびに、幼馴染の騎士が邪魔をしてくるためあまり悪役として動けない日々が続くが…!?
異世界転生ものという人気の設定をうまく使えていました。服装や背景などの描き込みも丁寧で、舞台設定が画面でよく伝わりました。主人公は悪役として振る舞うのですが、内面は好感の持てる女の子で、他のキャラクターも嫌味なく気持ちいい人物ばかりでした。主人公と幼馴染・レイスのかけあいはテンポよく、二人の関係性やキャラが伝わって来て読んでいて楽しかったです。レイスの気持ちに気付かない主人公なので、続きを読みたいと思える構成になっていました。ただ、主人公が論理的に考えて自分の役目を全うするということを最初から決めてしまっていたので、感情の変化が少し乏しく見えてしまいました。ブレない主人公というのも魅力的ではあるのですが、よみきりは最初と最後でどのような変化・成長があるかという部分も読みごたえに繋がるので、次回作はそこも意識してみてください。
クロエの師匠は高名な魔導士だが猫。しかも猫の癖にネズミが怖いしお風呂が大好きで魚より肉派。二人は5年前に出会い。毎日仲良く(?)言い合いをしながら共に暮らし、師匠に頼まれた仕事をこなす日々。ある日クロエはお使いを頼まれるが、魔物に気をつけろという師匠の忠告を聞き流す。お使いの帰り、上級魔術を使う魔物に遭遇するが…?
少女と師匠の猫(!)のキャラ立ちがしっかりしていて、かつ短いページ数ながら展開に山谷があり、楽しく読めました。師匠の「人肉は試したことがない」発言に「ネコ肉は初めてです」とクロエがにやにやしながら言い返す様子など、表情の豊かさやセリフの言葉選びから、二人の距離感や関係性がうかがえました。展開も、二人の日常やお使いの場面、もう駄目かと思ったら師匠が助けに来る場面、さらには過去の出会いシーンまで全て入っていて、飽きさせずに読ませる構成力がありました。ただ、短いページ数に詰め込んだため、師匠がクロエを助けるシーン等の魅せゴマまで小さく、見せ場が盛り上がりに欠けて見えたのは勿体なかったです。また、師匠がかっこよく見える絵があまりありませんでした。次はより長いページ数の作品に挑戦し、キャラの魅力を引き立たせる見せ場を増やしてみましょう。
オカルト研究会の新入部員である主人公は先輩の命令で3日前からなぜか明るい大学裏の竹やぶに行くことに。そこで見つけたのは眩しすぎて直視できない「流れ星の精」だった。死期が近い為看取ってほしいという流れ星の精の願いを叶える為、彼女に振られて落ち込んでいた主人公は精の元へ通い様々な話をする。が、精との別れの日が来て…。
序盤の掴みから最高でした! 地面が発光している光景と主人公の叫びで一気に惹きこまれました。また、タケノコと喋るシーンが、絵面・会話ともにとても面白く、終始楽しく読むことが出来ました。更に会話劇としての面白さだけでなく終盤しっかりとドラマがあり、ほろりとくるシーンも作れていることに構成力の高さを感じます。展開としては予想できるものではあるのですが、それでも、読者が感情移入できるようにエピソードを入れていて、まんまと感動させられてしまいました。ページの問題もあるので一概には言えませんが主人公に関する情報が若干後出しのように感じたのでもう少し小出しに出来ると良かったと思います。若干男女が似たような体型になってしまっているので描き分けはもっと意識してみて下さい。コマ割り等でも今後の伸びしろが沢山あると思うのでいろいろ研究して下さい。
主人公の小林さんは同級生の蒼ちゃんに憧れている。
「普通」であることにコンプレックスを持っている彼女は、優しくて勇気のある蒼ちゃんを見て、自分も特別な人間になりたいと思っていた。ある日、ふたりは路上に積まれたパイプが倒れ、女性が下敷きになりそうな場面に遭遇する。身を投げうって女性を助けた蒼ちゃんは怪我を負うが…?
ラストシーンに向けた構成が圧巻! 実は蒼ちゃんの方こそ主人公に憧れていた、ということが明らかになる場面、本当に驚かされました。タイトルのミスリードも効いていますし、18歳とは思えない構成力です。願いは叶わず、友人は大怪我を負い…と、起きる出来事は悲劇的で、途中まではバッドエンドも覚悟しましたが、ラストの「君になりたかった」という蒼ちゃんの一言だけで、全てが救われますね。構図や会話のテンポも良く、抜群のセンスを感じます。課題はキャラクター描写の弱さ。主人公、一体どう普通なのかの描写が無く、共感がしにくいです。学生ならテストの点数など…、細かい描写でも良いので、キャラを見せるためのエピソードを。また、猫のキャラクターも印象が薄く感じます。ファンタジーですので、仕草や言葉遣いでじゃっかん大仰にキャラ付けをするくらいのがベストです。
女子高生・あやめは、一人称が”我”でゴスロリファッションで通学する個性的な人物。同級生からは腫物に触るような扱いをされているが、隣の席でクラスの人気者・香坂だけはやたらと絡んでくる。イジって楽しんでいるだけだと思い、疎ましく感じるあやめだったが、香坂が自分のことをクラスメイトと話しているのを偶然聞いてしまって…!?
主人公のキャラクターが立っていて、冒頭から引き込まれました。絵柄も華やかで、主人公のレースなど細かいところまで描き込んでいて画面作りが上手でした。香坂くんも普段軽く見える分、主人公をかっこいいと認めるシーンはギャップがあり魅力的でした。ストーリーはシンプルでしたが、見せ場がはっきりしていて読者の読みたい方向へ展開できていました。特に、我が道を進んで動じない主人公が、香坂くんの言葉に照れるシーンがとてもよかったです。主人公と香坂くんの掛け合いもそれぞれのキャラが活かされていて楽しく読めました。主人公がなぜ現在のような振舞いをするようになったかの説明があれば、さらにストーリーにもキャラクターにも深みが出たかと思います。画力もストーリー構成力も演出力も高いレベルにあるので、自分なりに目標を作って、さらに力を磨いていってください!
杏利の最近の悩みのタネは、最近母が再婚してできた、チャラい義理の兄・理馬。
実父が「実はもう一つの家族がいて」と昔出て行き、軽い男が大嫌いな杏利は、ナンパ男な理馬が大の苦手。ある日、二人きりで留守番することになってしまう。理馬がやたらかまってきて杏利の機嫌は最悪に…。けれど理馬はどうも彼女と仲良くしたいみたいで……?
主人公たち2人のキャラクターや2人のやりとりがとても魅力的でした。杏利は理馬に対してはじめつんけんしていますが、理馬のことが苦手な理由が納得できる形で描かれていたり、彼女のお母さん思いな面や物語後半の理馬に対する可愛い反応など、読者が彼女を好きになれるポイントがたくさん描かれていて、好感度の高いキャラクターづくりができていました。理馬がチャラ男らしく杏利を口説く場面もかっこよく描かれていて、男子をかっこよく描こうとする熱意が伝わってきました。また、今までの洋酒しぐれさんの投稿作品に比べ、特に絵柄がぐっと可愛くかつ男の子がかっこよくなり、人物の魅力がさらに伝わるようになっています。今回は人物の関係性紹介と、関係が少し変化するところでお話が終わっていたので、次回はより人物の関係性がぐっと進むお話に挑戦できるとよいかもしれません。
妖狐一族のもみじは昇格するため、人間を化かし惚れさせようとする。彼がターゲットに選んだのは鈍臭く周りから距離を置かれている、森川花穂。自分に自信がない人間ならつけ込むのも簡単だと思っていたもみじだったが、ことごとく失敗してしまい、妖狐の姿で自分を情けなく感じていたところ、もみじを追いかけてきた花穂に会って――?
主人公のキャラクター・ヒロインとの関係性・仲間の妖狐たちとの軽快なやり取りなどがとても魅力的でした。主人公のもみじ君が他の妖狐に一泡吹かせようと頑張り、それでも色々失敗してしまうシーンなど読者が「かわいい」と思えるようなポイントがリアクション・行動・表情など要所にふんだんに盛り込まれており、好感度が高いキャラクターづくりが出来ていました。画力も高く、お話もよくまとまっていたので主人公とヒロインの距離が近づく流れも違和感なく読み進めることが出来ました。またお話の序盤で主人公の目的を明確化することによりお話の流れが頭に入って来やすく、よりキャラクターに目を向けられます。
より説得のあるキャラクターにするためにヒロインが周りに馴染めていない理由等設定部分の背景をもっと掘り下げてみてもいいかもしれません。絵柄も、色々試してみて下さい!
佐野知里は、ごく普通のOL。電子機器端末ホの中に「エリ」という不思議な友達がいること以外。自分で作った3Dモデルが突然意思をもって動き出し、知里にしゃべりかけてきたのだ。
孤独な彼女にとって救いをもたらしたエリ。彼女無しの生活はもう考えられない。
彼女に触れたいけれどスマホの中の彼女には触れられない、知里の葛藤の物語。
18歳にしてこの独特な世界観をマンガ内に描けている才能には脱帽です。朝野さんにしか出せない雰囲気とマッチした絵柄、物語の内容、キャラクターが見事に揃っています。このご自身の世界観を大切に育ててあげてください! 「電子機器端末の画面越しにしかコミュニケーションの取れない、独自の意思を持った友達」という発想が面白いです。そこにとどまらず、三次元に生きている主人公の心の葛藤をしっかりと描けている点が素晴らしいです。エリちゃんがあまりこちらに自身の気持ちを表明しない絶妙なデジタル感、距離感がまた◎。そこをより広げるために、主人公のキャラクターをもっと掘り下げ、どう孤独なのか、どんなバックボーンや思いがあるのか、という生々しい人間らしさを出せるとよいでしょう。絵もまだまだなので、まずは綺麗な線を引く事やデッサンを意識してみて下さい!
主人公のあかりはバレー部次期キャプテン。元気がとりえだが、性格はあわてんぼうでミスが多く、周囲からも期待されていない。いつも優秀で外見も良い双子の弟、あおいと比べられて
生きてきた。ある日、あおいと比較されることにいよいようんざりしたあかりは、彼との口喧嘩の末に、「双子じゃなければよかったのに」と口走ってしまい…?
画力が高く、絵柄も今風で画面が華やかです。特に男の子の描き方が抜群に上手く、高評価に繋がりました。見せ場はもちろん、ちょっとしたシーンにもしっかり表情がついていて、その度にドキリとさせられます。
また、無駄なコマや台詞が少なく、そういったキャラの表情や行動を中心に見せられているので、ネームも洗練されている印象。少しコメディチックな前半から、一気にシリアスな展開に引き込む構成も目を惹きました。ただ、途中で視点がヒーローに移る場面がありました。その後どちらのキャラの目線で読めばいいのか混乱するので、視点はぶれないようにするとベターです。また、主人公の描写として欠点の方が目に付くので、彼女の良いところ(元気さ、実直さ等?)が出るような見せ場を入れられると◎。読者が応援したくなる、幸せになってほしいと思える主人公像を意識してみましょう。
学年一の美人・美咲に告白された笹原。しかし、特にイケメンでもなく目立ったところのない自分がなぜ好かれているのか見当がつかない。彼女に誘われた放課後デートで「美咲が本気か
遊びか」を探ることに…。
そしてその様子を友人2人もこっそり見守ることにするが、現場に着いてみると美咲の女友達の涼もデートを覗き見しているようで?
女の子は可愛く男の子は恰好いい、そんな今時の絵柄がとにかく高評価でした。特に男子キャラはメインだけでも3人出てきますが、描き分けがしっかりしていて、見た目やしぐさだけでそのキャラがどんなタイプの人なのか伝わってきました。絵柄の魅力はそのままに、これからは画力をアップしていきましょう。大体のコマがアップ、もしくは腰上で切れているので、全身を入れた動きのあるコマを描くように意識してみてください。男子キャラの身体のデッサンが不安定なので要注意。背景もしっかり描いてキャラの配置を示しましょう。ラストシーンに大きなキメゴマを持ってきているのは印象に残って◎でした。個性豊かなキャラたちはとても魅力的ですしそれぞれの活躍も描けていますが、ページ数に対してどうしても人数が多い印象です。
次回作では設定やエピソードの取捨選択をしてみて下さい。
祖父の作ったアンドロイドの「アルファ」と暮らす少女。アルファは彼女をマスターと呼び、執事として仕えてくれているが最近は様子が変。「一緒に寝て、ぬくもりを感じたい」と言い
出すなど距離感が近いのだ。
アンドロイドゆえ、日頃は感情に乏しい彼の行動に戸惑う少女。彼は機械なのだから、「それ以上の感情」はないはず、と思うが…?
描線が綺麗で、洗練された絵柄が高評価でした。画面のメリハリもしっかりついており、話が盛り上がるにつれてコマも大きくなる…などの工夫がされているので、物語における感情の起伏がよく伝わってきます。
男の子の絵柄もかっこいいので、いつもはクールなアルファの突然の行動にときめいてしまう主人公の気持ちもよくわかります。主人公も、喜んだりときめいたりする際の表情が可愛く、応援したくなりました。ストーリーも展開に無理がなく読みやすいのですが、逆に言うと予想外のことが起きず、もう少し個性が欲しいところです。例えばアルファにとって作り手のおじいさんにはなく、主人公にはある魅力がどこかわかるようなエピソードや、アルファが変化し始めたきっかけのエピソードであったりを、キャラクターらしさを生かして描いてみると◎。自然にキャラが立ち、個性が出てきます。
相楽唯15歳。親には愛されず、信用できる友達もおらず、恋も報われない彼女は人生を終わらせる決意をした。屋上から飛び降り、目が覚めるとそこは異空間。
冥府の案内役・シュガーから、他人の幸福を奪って自分の来世に投資する「来世ゲーム」に参加するよう提案が! 復讐したい人に触るだけで来世はハッピーになれると言われた唯は…?
とにかく瑞々しい10代のセンスが光る作品でした。
家族や学校の生々しい悩みを、刺さるように描く冒頭に惹き込まれます。前半はベタを上手く使い、作品独特のダークな雰囲気が出ています。クライマックスは逆に白多めの画面で、読み手に主人公の決意を清々しく共有していました。その画面構成力もセンスの一つですが、少女まんがらしい華やかさを出すため、もう少しトーンも増やしてみましょう。絵柄も今時のシャープさが◎。背景含め、沢山描いてぜひ画力アップを! お話も主人公が格好良く面白い展開です。ただ、終わり方はもう一歩。周囲の不幸な未来を見て考えを改める優しい主人公…というのはもちろん◎ですが、このまま今世に戻っても彼女を取り巻く現実は厳しいまま、というのが気になります。シュガーの一言+今世に何か彼女の頼りになるものが存在すると、読後感が良くなります。
高校入学から2年6か月。
分刻みで決まったルーティンを、規則正しく無駄なくこなすことに生きがいを感じる須藤。当然毎日決まった場所から電車に乗るのだが、向かい側のホームにも毎日同じ時間、同じ場所か
ら電車に乗る女の子が。ある日、本屋で彼女に偶然遭遇。予想外に会釈をされ、とまどう須藤。次の日、彼女はホームにいなくて…?
キャラを活かしたストーリー展開が秀逸! 彼がどれだけ几帳面でルーティンを壊したくない人物か、序盤でわかりやすく描いているので、彼の行動原理が読者にも無理なく馴染みます。その上で「気になる女の子と話すためにルーティンを崩せるか」という展開になっているので、「どうするんだろう?」と続きが気になります。主人公が彼女を気にする理由も、シンパシーを感じるから…という無理のない感情なので、読みやすかったです。理性的な主人公が彼女のことを気にし始めた後の、いい意味での挙動不審さは好感が持てましたし、ストーリーのテンポの良さにも一役買っていました。課題は絵柄と画力。立ち絵の等身がコマによって不揃いなので気を付けましょう。男女の体格差も意識して。手や肩幅、首元など男子らしいパーツを凝ってみると◎。男子キャラの顔も人気の絵柄を参考にしてみて。
彼女の結衣に突然別れを切り出された蓮。その理由は、「私に対して気持ちが入ってない。本当に私のことが好きなのかわからない」というもの。未練のある蓮が彼女を追いかけようと腕を掴むと、腕の周りにふわふわした感触が! わたあめのようなその物体を食べてみるととてもしょっぱい。他の人の周りにもわたあめが見えるようになって…?
まとう人の感情によって味が変わるわたあめが見えるようになってしまう…という奇抜な設定が良かったです。読者を驚かせよう、見たことのない世界観を作ろうと工夫する姿勢が◎。ただ、どうして突然彼だけがわたあめが見えるようになったのか、なぜ彼でなければならなかったのか…。その理由を投げ出さずにもう少し説明してあげるとより説得力が増します。悩ましげな男の子の表情にはどこか色気があり、ビジュアルの良い男の子を描くセンスがあると思うので、全体的に画力を上げてぜひ頑張ってみて下さい。課題はキャラクターの掘り下げ。設定の説明に多くのページが割かれているので、読者は彼女の結衣同様、「彼がどんな人かわからない」「彼女のどんなところが好きなのかわからない」状況です。もう少しキャラの内面を描くエピソードを入れて、読者が感情移入できるようにしましょう。
幼馴染のリカに告白しようと屋上に呼び出したユウジ。
何度も練習したはずなのに、虫に邪魔されたりとどうもうまくいかない。しかし、彼はどうしても今日告白したかった。その理由はサッカー部エースの金沢が「明日リカに告白する」と言っているのを聞いてしまったから! 一方、実はリカもユウジが好きで、彼からの告白をずっと待っていて?
物語の序盤とラストの、思春期らしい勢いが読んでいて気持ちいい作品。一生懸命なメインキャラ2人が微笑ましいです。表情もくるくる変わり、髪の毛や服にも動きがあるので楽しく読めました。背景がもう少し描けると場面転換などが分かりやすくなります。同じくらいの大きさの顔が入るコマが続く印象なので、アップや見開きなどを入れると、持ち前の勢いを更に生かせると思います。メリハリを意識してみて! 女の子の顔はもう少し柔らかく描けると◎。男の子は親しみやすいのですが、イケメンらしくキメる瞬間を作って、女性読者が楽しむポイントを作りましょう。お互いを好きになった訳や告白しようと思ったきっかけなどが少々テンプレート気味なのが気になります。少女まんがの王道を攻めるのも大事なのですが、セリフや演出などを工夫して、エピソードに自分らしさを持たせましょう。
作者の意図や主人公の心の内を読み取るのが苦手で、読書感想文も得意ではない佐田。ある日学校の屋上から自殺を図る同級生、春野と出くわす。止めようとすると「私に死んでほしくない理由を原稿用紙5枚以上で説明して」と条件を出されてしまう。必死に書き上げようともがく中で、クラスの人気者である春野の胸の内を知ることになり…?
まず、物語のセンセーショナルな始まり方が上手で読者の心をつかみます。画面作りも大胆で、一ページにぎゅっと詰まりすぎず軽妙なため、作品のテーマ自体は一見重たいのですが、読みやすく感じました。コマ運びや選ぶ言葉も、木染さんにしか描けない独特のセンスが光っています。学年最下位で根暗でパッとしない主人公と、明るく成績優秀で誰からも好かれる春野との対比も、立ち位置が真逆でそれぞれを上手く立てていました。ただ、ラストに向かっていくにつれキャラの考えていることが分かりづらくなったように感じました。春野が佐田のどこに惹かれたのか、結果自殺をやめるきっかけになったのは特にどの言動なのかなど、雰囲気に任せすぎて読者を置いていかないよう注意しましょう。二人にとってターニングポイントとなるエピソードを印象に残るよう派手に描いてあげるのがコツです。
「未芽衣ちゃんって何言ってるかわからない」小学生の頃そう言われたのがきっかけで、人と話すことが怖くなってしまった未芽衣。高校に入学した今も、それが原因で友達ができない毎日…。そんなある日、前の席の一之瀬に突然話しかけられる。口下手な未芽衣とは真逆で、思った事をすぐ口にするタイプの彼。でも思ったより話しやすくて?
とにかく絵柄が抜群に可愛いです! 女の子特有の華奢な体つきや、瞳の輝き、髪の毛の繊細さなどとても少女漫画らしく描けています。対して男の子も、首筋や手など「男っぽさ」が出せるパーツをうまく使って、男の子特有の色気を出せています。ただ、女の子に比べて男の子はコマによって顔の雰囲気が変わってしまう傾向がありますので注意しましょう。トーンの使い方も今時でセンスが光りますし、画面全体から出る「可愛い」雰囲気が武器になると思います! 主人公は口下手ながらも卑屈ではなく一生懸命で応援したくなる描き方が◎。ラストも目立つ大ゴマを用意できたのは絵柄の良さも活かせますし非常に良かったのですが、メイン二人の関係性が大きく変わらなかったのは少々残念。もう一つ男の子のキメシーンがあると読者の満足度も上がるので、ラストの盛り上げをより意識してみましょう。
ゲームが好きで根暗な幼馴染・遊真を毎朝起こすのが日課の鞠音。
抜けているようでさりげなく優しい彼を知る彼女は、友達から「遊真といると鞠音の格が下がる」と言われても彼と一緒にいることをやめない。ある日、人に好かれる方法を遊真から聞かれた鞠音。複雑な気持ちになりながらも乙女ゲームのキャラを参考にしたら、と助言をし…?
瞳や髪の毛、服のシワなどの人物描写はもちろん、背景や効果に至るまできっちりと描き込んだ画面に気合を感じます。キャラの表情も豊かなので、話を追っていて楽しいですし、自然に感情移入できました。逆に言うと抜きのコマが少ないので、際立たせたいコマがいまいち目立たないというデメリットも。特に後半でお話のヤマ場が近づいてきたら、コマを少なめにし、効果も選んでメリハリを意識しましょう。鞠音の人気者なのにそれを鼻にかけないまっすぐさや、車の水はねから守ってくれる遊真の意外な優しさなど、キャラの魅力的な部分を読者にわかりやすく、かつ出来るだけ冒頭に近いページで示しているのも好印象。ただ、少女まんがなので男の子のかっこいい部分がもう少し見たい…というのが本音。後半も鞠音の見せ場が多いので、「変わること」を意識した遊真の頑張る姿も入れてみては。
入学早々ハーフのイケメンがいると騒がれた隣の席の西鬼君は、テストの成績もトップでクール。めったに笑わない彼の無表情をいかに崩すか…そんな戦いを挑み続けている主人公・梅子。なのにいつも先に笑ってしまうのは自分の方。勝利の正の字もどんどん彼側に溜まっていく…。一方で実は西鬼君は高校デビューを頑張ってしまっ
ただけの陽気な男だった! 梅子と普通に喋ってみたいという気持ちが募ったその時、出た一言は?
デフォルメの強い絵柄が可愛く、センスが光っています。少し間の抜けた可愛い表情
がストーリーと合っていて素敵でした。トーン使いも今時で可愛らしく華やかです。一方で基礎的な画力はレベルアップが必要です。服のシワや身体の構造などのデッサンをしっかりしましょう。背景ももう少し頑張ってみてください。高校生らしい一生懸命な二人のキャラはとても微笑ましく、嫌味がないので読んでいて自然に応援したくなります。そのセンスも素晴らしいです! 西鬼君のキャラの付加価値を盛り上げるだけ盛り上げて、実は関西弁の陽気なキャラだった…という展開も落差があり面白かったです。ただ、その後のオチが弱かったのは残念。あるあるにならないよう気を付けつつ、しっかり盛り上げましょう。
地獄で働く鬼たち向けの食堂に勤めているアザミ。店の常連の獄卒の鬼、コノエのことが気になる毎日。彼はいつも変な味のアメをくれたり、アザミのことを子ども扱
いしてからかったりと交流はあるものの、実はその他のことはよく知らない…。そんなある日、綺麗な女の人と可愛い男の子と家族のように仲良く歩くコノエを見かけ
てしまったアザミ。ショックで思わず彼を避けてしまう。不審に思ったコノエが追いかけてきて…!?
絵柄のレベルがとても高く、可愛かったです。特にキャラの表情が素敵で、笑った顔
や恥ずかしがっている顔などそれぞれ思わず感情移入してしまうほど上手く描けていました。髪の毛の線も丁寧で◎。せっかく絵が達者なので、それを活かして見開きや大ゴマを大胆に使うページを作ってみるのもオススメです。また「地獄の食堂」という設定自体は面白いのですが、あまり活かしきれてない印象です。キャラの気持ちやエピソードが地獄の世界観でなくても成り立ってしまうものばかりだったのが惜しいです。好きな人が自分のことをどう思っているのか…という悩みは共感しやすいですし読みやすさはあるのですが、ファンタジー設定の場合、その世界観でしかできないことを積極的に取り入れてみましょう。
初めての彼氏が出来てひと月。マイペースな彼・悟と手を繋ぎたいユウは、自分からリードしようと勇気を出すものの「準備があるから待って」と言われてしまう。緊張して心の準備を…?と思いきや、次の日彼はなんとマジックハンド越しに手を繋いできた!
それからも直接手を繋ぐことをなぜか拒否されるユウ。原因は自分の強すぎる握力にあるのでは?とどんどん不安に…。実は彼は自分の手汗のすごさがコンプレックスで…!?
なぜ手が繋げないのか、先が気になる話運びが上手で、思わずページをめくらせる力
があります。特に最初のマジックハンドで手を繋ぐシーンはインパクトが強く、印象に残る掴みができていました。逆に出オチにならないよう、出だしよりも更に主人公や相手役の個性が出るような展開が用意できるとより良いです。基本の画力はあるのですが、絵柄の古さは気になるところ。特に表情の作り方のクセが強いので、可愛くて面白い、少女漫画らしいデフォルメができるよう研究してみましょう。画面全体のメリハリをつけるように意識するのもオススメです。大ゴマでのアップの顔はもっと大胆に大きくしてみると、ヤマ場の印象もより残りやすくなります。演出力を上げて、魅力的な画面作りを心がけてみて!
恋愛小説が好きでいつか運命の人と出会えることを夢見る寧々が、ある日ボールをぶつけてしまった相手…それは学校一のモテ男と言われる飛鳥先輩だった。見た目はもちろん麗しく、性格も優しい完璧な彼。しかし彼の隠された二面性を目撃してしまった寧々は、秘密を黙っておくよう脅されてしまう。関わりたくないと思う寧々だったが、素の彼を知れば知るほど魅力的に感じるようになる。ある日彼から突然手紙を受け取って?
「麗しの彼」を表現するのにぴったりな繊細で綺麗な絵柄です。描線も細くて美しく、少女漫画向きです。女の子の表情も魅力的で、特に伏し目が可愛くて印象に残りました。もちろんヒーローも、いい意味でやや女性的な美しさが感じられ、色気のある仕上がりになっていました。トーン使いはしつこくなく、それでいて華やかなのが今どきで好印象でした。設定やストーリー運びは少女漫画に求められる王道である点は良いのですが、既視感は否めないので個性が欲しくなるところです。王道の設定の中でも、なにか一つキャラを立てたり、自分らしいセリフ回しをしたり、ギャップを作ったりなど工夫をしてみましょう。特に物語の印象を決めるヤマ場やラストにオリジナリティを出せるとベストだと思います。
誕生日プレゼントに自分が何が欲しいかも思い浮かばない程、「好きなもの」が無く何事にも無頓着な主人公・亜貴。小さな頃から弟2人の世話を任され、彼らを優先するあまり、自分で何かを選ぶことができなくなってしまったのだ。そんな彼とは対照的に、好きなものがはっきりしている女友達・きいち。こんな自分のことを「他人想いで優しい」という彼女のことが珍しく気になる亜貴だったが、その理由にある日気づいて…?
細くて綺麗、かつ強弱のある線で描かれる絵柄が魅力的です。輪郭や体格、瞳など男
女差が出れば出るほど萌えに繋がりやすいものですが、それもきちんと描き分けられています。特に女の子の髪の毛が丁寧でとても良いです。背景の描き込みはしっかりめですが、もう少しトーンを貼って画面全体が華やかにできると、より一層少女漫画読者のツボを押さえられると思います。好きなものがない主人公が、やっと「きいちのことは好き」と見つけられるという、物語のテーマもはっきりしていて読みやすく、まとまっています。反面、ストーリーの流れや設定重視でキャラクター自体の個性は薄味に感じられたのは改善ポイントです。今回のお話なら特にヒロインの方にもう少し特徴をつけられるとベターでした。
就職活動真っ最中の男子大学生、水原君。ある朝起きたら、体が小学生位になっていた。彼女であるあゆこは楽観的に構えているが、医学部の友人からは「心理的な要
因で思い当たることは?」と言われる…。実はうまく進んでいない就活を、あゆこには言えないでいた。二人でファミレスにいる時、同級生と出くわし、水原は大手ばかり狙い全敗している、と言われてしまう…。翌日、更に体は縮み赤ん坊に…。そこにあゆこが…!?
「朝起きたら 体が子供になっていた」という、急に幼くなるという展開ながら、スムーズにお話に入れる冒頭になっています。子供になったことに驚きつつも、普通に大学に行き、彼女に事情を話したり…と、ある意味淡白に進むのですが、それが絵柄と合致し違和感なく読ませてられています。実はプライドが高く、就活の圧力が引き金だったとわかるシーンも、主人公が子供の姿で涙することで、より読者に切なさを感じさせる効果が出ています。淡々と見せつつも感情の波を持たせていて、たなかさんの年齢以上の力量を感じます。惜しいのは画面作り。人物サイズにメリハリがなく、全体的に小さめに描いていることで単調に見えがち。感情の山場は大ゴマ・寄りの構図にするなど、意識してみて下さい。
高校生の真衣には、友達が一人だけいる。友達の美知花ちゃんは、可愛いけど、すぐ人を頼ったりお金を借りたり…。彼女が休んだ日は、悪口に花が咲いた。その日から真衣は他のグループにいるようになり、美知花ちゃんとの仲は終わったかと思うように…。ある日、放課後出かけようと誘いが来たが、それは彼女の今の友達の都合が悪かったから…。「真衣ちゃんより大事な子ができた」という彼女を『大きらい』と思う真衣だけど…。
女子同士のセンシティブな好悪の感情を見事に描き出した作品! 複雑な心情をモノローグだけに頼らずエピソードを絡め16Pで完成させたネーム力は素晴らしいです。自分とは対極で、手放しで好きになれない相手への「嫌」という感情を高める中盤の後、美知花ちゃんの退学。そこで自覚する、彼女のデリカシーがなく見えた部分に、救われていた自分。事件がありそれが感情の機微に繋がるという、「エピソードによって気持ちが動く流れ」を上手く作れています。描線も繊細で、瞳も髪も綺麗です。ただ、画面の白さは惜しい所。演出になる場合もありますが、全編を通じて白いと、「効果」にならないことも。単調に見えないよう、コマとコマの隙間を生かすなど、画面全体の印象を考えてみて下さい。
「大好きな幼馴染に、ふれるだけのキスをした」。
男子高校生同士、しかも幼馴染は、自分の姉のことが好き…。困惑した幼馴染はその日は部屋を去るが、後日ちゃんと、「お前の姉ちゃんとつき合ってる。気持ちには答えられない」と真摯な返事をくれる。その時の彼の悲し気な表情を見て、「冗談に決まってんじゃん」と言ってしまう主人公…。そして、「お前がそう言うなら」と受け止めてくれた幼馴染…。そして時は過ぎ――。
部屋の中、無言のキスシーンから始まる冒頭は、読み手に緊張感を与えつつ展開への期待を持たせており、とても良いです。また、幼馴染がちゃんと返事をする→主人公が告白を冗談にする→主人公の本心をわかりつつ冗談として受け止める…という流れは、互いを親友として信頼している様子が上手に表現できてます。そこでの細かな表情も◎! 失恋の切なさを読者により共感させるには、幼馴染のどこが好きだったかなど、恋心の具体性を見せると効果的。叶わない思いを感じる分悲しみが増します。ラストは、よだかさんならではの台詞がほしかった所。絵柄はペンタッチの硬質さはあるものの、雰囲気・色っぽさがあります。ペンの硬さを取り、ツヤベタを綺麗にすると、魅力が増す画面になります。
小学生の頃から一緒の橘さんと光井君。昔、上級生に立ち向かった光井君に対し、橘さんは「親分」と呼ぶ間柄。その上級生とのケンカの時、光井君の助太刀に入ったことで頬に大きな傷を負った橘さんは、今でも同級生から傷を揶揄されることが…。そんな彼女に告白をした光井君だけど、「それは怪我への同情」と突っぱねる橘さん…。彼には見上げ続ける星のような存在でいてほしいと告げる橘さんに、光井君は…!?
告白シーンから始まり、読者の期待感をつかむ演出が○。また、背景は丁寧に描き込まれていて、構図も相まって好印象です。主人公二人の共有の思い出が、現在の気持ちにつながっているドラマも読み手の心に沁みます。過去の出来事が二人にとって大事であり、そこから絆も感じられますが、二人の現在の人物像が読者にとって曖昧な印象のまま。主人公の頬の傷を同級生がどう思っているかはわかるのですが、主人公のパーソナリティまでは感じ辛いところ。光井君も、慕われている人だとは感じますが、彼がそう思われている具体性を描くと、読者がよりお話に入りやすいです。お話は、互いの気持ちを明かしてラストになるので、もう一歩二人の感情に踏み込んで終われると、満足度があがります。
絹子の曽祖父は、明治を代表する日本画家。彼の描いた絵「紅葉鶏図」を見てから彼のような画家を夢見ているけれど、芸術展に作品を出しても、絹子の絵は選外になるばかり…。落ち込む絹子の相談相手は「紅葉鶏図」の付喪神・那智。
絹子を応援してくれている那智に、絹子は「賞がとれる絵が描きたい!」と泣きだして…?
圧倒的な画力と華やかな絵柄の扉絵が目を引いた作品!日本画家を目指す少女の絵が、松風さんの高い画力で見事に表現されています。絵柄はやや古いですが、細い描線で描かれる髪の毛や瞳が美しく幻想的。また付喪神・那智の衣装も麗しく、〈人ならざる存在〉であることを一目で感じられるデザインになっています。主人公キャラはひたむきで一生懸命。応援したくなる素直さを感じさせてくれます。今後の課題はネタの引き出し。前回描いた作品と同じキャラ配置(人外×才能に悩む少女)、同じストーリー展開(彼を思い浮かべた作品で成功する)で新鮮味がありません。審査は「投稿者が前回から成長しているか?」も見ています。新しいネタでぜひ挑戦を!
遠藤美香は隣のクラスの葉山海狸に狸の耳と尾が生えているのを偶然目撃してしまう。
「そういう趣味?」と質問したところ「趣味じゃないわ
よ!」と彼は狸に変身! よくよく事情をきくと、好きな子と両想いになりたくて、人に化けつつ先生に暗示をかけて入学したという。彼が恋い焦がれる女子との仲を手伝ってと頼まれ!?
隣のクラスの男子が「狸だった!」という気になる冒頭から始まる楽しい作品。とくに狸のキャラクターが外見と中身ともに可愛く、この狸の恋を応援したい!と素直に思わせてくれました。狸の絵柄は、ふわふわの毛並みを表現するために細かな斜線で描きこまれていて丁寧で繊細。狸のキャラはころころと変わる表情が雄弁で、切ない心情がストレートに伝わってきました。惜しいのは、主人公が狸の「恋を手伝う」といったものの傍観者になってしまい、クライマックスで活躍するシーンが少なくなってしまった印象。今回は狸の恋をじっと見守る立ち位置でしたが、次回は主人公が相手役に働きかける(=読者が一緒に体験できる)お話に挑戦してみてください。
小さいころから幽霊が視えた凪。
ほとんどの幽霊に害はないし怖いと思ったことはない。ある日、旧校舎に幽霊が出たという噂をきいた凪は確かめに行き、そこで少女・
春子の霊を見つけてしまう。しかも「春子が視えてるんですよね。僕たちに力を貸してくれませんか?」と上級生の男子に協力を依頼され、一度は断るけれど…!?
「自分は何もできない」と落ち込む凪が、幽霊だと信じられないぐらい明るい春子と出会って、恐れずに他者とかかわってみようと踏み出すまでのお話。扉の絵柄がとても可愛くて引き込まれます。とくに描線が細く丁寧で、ゆるやかに広がる髪や翻るスカートなど物の質感表現が美しいです。お話はよくある「霊感少女・ミーツ・幽霊もの」ではありますが、少女の方が暗くネガティブで、幽霊の方が明るくポジティブという組み合わせのギャップが面白いです。また、幽霊の願いを叶えながら主人公の悩みも解決していくので読後感がとても爽やかでした。今回は主人公よりも幽霊&男子が目立ってしまったので、次回は主人公がメインとなる話を読んでみたいです。
死神派遣会社のバジルは同じ死神のサラトガと一緒に、幽霊に天国逝きを進める仕事をしている。
今回は没後二百年、庭園にいる地縛霊レイラ・フィオルドを迎えに来た。天国逝きをすすめるがレイラは断ってしまう。レイラを迎えに
来るといった、待ち人に会いたいからという。
バジルはレイラの願いを叶えると約束して…?
幸せに導いているようで、実は絶望に落とし込んでいたというオチが効いていて、二度読むと違った印象を与えてくれる作品。「死神だけど天使になりたい」というアンビバレンスな思いを抱えた死神のキャラが面白いです。死神バジルとサラトガの、本心を隠した軽妙なやりとりがここちよく、この二人のキャラに興味を抱かせてくれます。画力も高く、ページのめくりと引きの演出も上手いです。ただ、途中まで誰が主人公で、何をテーマにしたお話か分からずに進行するので、全体を通して「主人公がどういったクライマックス(感情)を得るのか?」を意識したストーリー作りをしてみて。また、絵のクセが強いので、男子キャラの輪郭・目鼻・髪型は要改善を。
「この学校には忍者がいる」と信じている、忍者同好会の先輩。毎週火曜と
木曜放課後の一時間、忍者を探すために校内を一周している。
しかし同好会の後輩は、「忍者なんてまだ信じてるんですか?」とナマイキな口をきいてくる。
同好会ができて1年、忍者の生き残りがいると信じて疑わない先輩だが、実は後輩の正体は!?
「忍者がいるかどうか探す」のが目的の話ですが、すぐに冒頭で後輩=忍者であることが分かるため、
読者は主人公がいつ後輩の正体に気付くのかハラハラしながら読めるストーリー構成になっていました。
繊細な描線で描かれるキャラクターは生き生きとしていて、表情豊か。女子の絵柄は可愛く、
男子の絵柄は格好良く描き分けができています。また、画力が高く、カメラアングルも多彩。
男子の活躍シーンや女子の恋心が動くシーンなど、大きく見せるべきシーン(=読者が大きく
見たいシーン)を分かっていて、画面の演出力に長けています。
面白いアイディアを可愛い絵柄&高い画力&いきいきしたキャラ&続きの気になるストーリーで
まとめあげ、文句なしの1位。
「願いなんて叶う方が間違いだ」と4歳にして悟ってしまった主人公。そん
な彼を待ち伏せして、毎回話しかけてくる不思議な女の子に出会う。
あるとき七夕祭りの音が聞こえてくる。七夕を知らない彼女に
「お星さまに願いを叶えてもらうイベント」と教えると、彼女は「じゃあ君は私にお願い
ごとをするといい!」と言い!?
宇宙飛行士になりたい少年と、「星」となのる少女の出会いを物語にしようと考えたそのアイディアがすごい!
不思議な少女を普通ではありえないほど長い髪にしたり、中盤で少女の恐ろしい本性を垣間見せたりなどして、
彼女が「人間ではない存在」であることに、うまく説得力を持たせています。
また、画面構成に高いセンスを感じる作品でした。二人だけで話している単調なシーンでも、カメラアングルが多彩で
飽きさせない演出ができています。お話は、最後まで少女の正体が謎のまま終わるので、やや消化不良感が。
また、なぜ主人公の元にやってきたのか?などにも理由が示されると良かったかも。
絵柄は男の子も女の子も可愛いので、ぜひこの方向で磨いて!
少女漫画みたいなイケメンとの恋に憧れていた上坂さん。ある日やってきた
転校生のイケメン・加賀くんに一目ぼれして、勢いで「好きです」と告白してしまう。すると
「初対面なのに好きとかありえないから」と冷たくあしらわれてしまう。酷い言い方に傷つく
上坂だが、やっぱり格好いい加賀くんを目で追ってしまい…?
十代の作者らしい、等身大の爽やかなラブストーリー。
上坂さんと加賀くんのやり取りがとても自然なテンションで描かれているので、
読み手がキャラの気持ちに入り込みやすいです。また、コマ割りと台詞運びがとてもスムーズで読み
やすくて◎。カメラアングルを駆使して、飽きさせない画面づくりが上手いです。絵柄も可愛くて好印象。
さらにストーリーは、冒頭で一目ぼれしていた主人公が、ラストでは「よく知らない人に告白されても
好きになれない」と気づく流れになっていて、オチがしっかりついていました。ただ、共感しやすいス
トーリーですが、目新しさがもう少しほしい印象。あなたにしか書けないセリフ、シーンを
一つでいいので追及してみて。
とある雨の日、下校しようとして傘を忘れたことに気づいた白石さん。そこにたまたま現れたクラスメイトの清田くんの傘に入れてもらう
が、大雨でびしょ濡れになり二人で雨宿りをすることに。初めて喋る清田くんに緊張する白石さんだったが、ふとしたきっかけで周りと
上手く話せないという自分の悩みを打ち明けて…?
少女漫画らしい可愛い絵柄がまず目を惹く作品。画力も高く、細かい小物や背景までしっかり描けていたのも〇。
また初対面の男女、しかも経過時間は数十分程度にも関わらずしっかりとキャラの気持ちの変化や山場が作れており、ネーム力
を感じました。嫌味が無く、素直に応援したくなるキャラが描けるのも強い武器になると思います。課題は引きの弱さ。雨が
上がるまでの少しの時間を切り取るというのは面白いのですが、それだけでは物足りません。ヒーローも優しいイケメンという
以上の印象が無く、キャラとして弱いです。基礎力は非常に高いので、次作以降は設定でもキャラでも、もう少し読者が興味を
持つような要素を入れるという事を意識してみて下さい。
普通の人には見えない、いわゆる「幽霊」が見えてしまう高校一年生・倉田ゆかり。オカマ幽霊から猛烈アプローチを
かけられている友人・日高ショウも、もちろん“見えない”側の人間。そんなショウにある日突然告白されるが、自分に
霊感があることがバレたらどうせ彼も離れていってしまうと思い、すぐにОKできず…?
綺麗な絵柄と安定した画力が光る作品。背景もしっかり描けています。筋肉バカや露出狂、オカマなどの様々な
幽霊が出てくる冒頭も、お話への期待を高める引きになっていました。ただ、要素を詰め込みすぎてお話が散漫になっている
印象。サブであるはずのオカマ幽霊のエピソードにページを割きすぎています。ゆかりとショウはどういう関係で、なぜお互
いのことが好きなのかという部分を読者にしっかり伝えて欲しかった。また、ゆかりがこれまで「幽霊が見える」ことでどの
ような扱いを受けてきたかも描かれていないため、シュウが受け入れてくれたことの嬉しさも伝わってきません。短いページ
の作品の場合、動かすキャラクターは最小限に絞りましょう。
メイクやコスメに詳しく、その腕前から「魔法使い」と呼ばれる有働くんは、自分の頭の中で思った通りの色が表現できないことに悩んでいた。そんな折、たまたま校内で見かけた美術部の三苫さんの絵の色遣いに惹きつけられ、彼女に弟子入りすることを決める。突然美術部にやってきた学校の有名人に戸惑う三苫さんは・・・?
題材もお話も、とても少女漫画らしいお話。有働くんにも三苫さんにもキャラ付けをしようとしているのは◎。また、最後の三苫さんの表情はとても良く描けていました。ただ「魔法使い」と呼ばれている有働くんが、実際に女の子を変身させたりメイクの勉強をしたりするシーンがほとんど無く、何がすごいのかがあまり伝わってきません。ラストで三苫さんを変身させているシーンも変化が分かりませんでした。彼のすごさを読者にしっかり見せた上で、せっかくならメイクやコスメの豆知識を入れ込む等すると説得力が出たはず。文字の説明だけでキャラを作らないように気を付けて。また総評にもありますが、予定調和になりすぎぬよう自分の個性を磨きましょう。